【パリコレおさらい】「ミュウミュウ」「アンダーカバー」が圧勝の2024年春夏 超辛口な海外ジャーナリストたちの評価
「アンダーカバー」
騒動さえ美しく完結させるストーリー
ファッション・ウイーク後の、日本と海外のファッション業界人との井戸端会議的なカジュアルな場でも、「アンダーカバー」を今季のベストコレクションに挙げる人が多かった。海外メディアに目を通しても、同ブランドのコレクションに異論を唱えたのは、米国の動物愛護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)だけだ。後に、テラリウムのスカート内部に生きた蝶を使用した演出に対する抗議を受けて、高橋盾デザイナーはPETAに謝罪文を送った。今後は生きた動物を二度と使わないことを宣誓したが、やはり今振り返っても、ショー後に公園に放たれたこの蝶がいなければ、神秘性に満ちたショーの雰囲気が完成しなかったと思うのは、私だけではないはずだ。
辛口エールを送ることが多い「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」のヴァネッサ・フリードマン(Vanessa Friedman)は、「過剰すぎるほどの感情を喚起する瞬間を生み出すことに長けたデザイナー」だと述べたうえで、最も素晴らしいコレクションとして「アンダーカバー」を称賛した。「『世界の閉塞感を感じていますが、自分自身を解放したいと思っています』と高橋デザイナーは通訳を通して語った。私が彼に少しでも安心させてあげられるとしたら、人生はテラリウムの中の蝶のように儚いかもしれないが、高橋デザイナーのような芸術家が季節ごとに私たちに与えてくれる美しさには永続性がある、と言いたい。私たちはそれがどれほど幸運であるかを認識していないだけだ」。
テラリウムの演出に感銘を受けたのは、「ヴォーグ・ランウエイ(VOGUE RUNWAY)」のニコール・フェルプス(Nicole Phelps)も同じ。「高橋デザイナーはファッション界で最も独創的なデザイナーの一人。テラリウムのドレスは新たなレベルの創意工夫であり、技術的な偉業であると同時に、感情的に共鳴するものでもあった」と説明した。また、米「WWD」のマイルズ・ソーシャ(Miles Socha)も、「コレクションは物語性と芸術性に溢れていると同時に、魅力的で、暗くロマンチックで、エッジの効いたものだと感じた」と称えた。ベテランジャーナリスト、ティム・ブランクス(TIm Blanks)は、「最悪の時代こそ、最も興味深い芸術を生み出すことがよくある」と前置きし、「メランコリニックな世界に存在する最も刺激的なショー」と「ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)」に綴った。