【田辺裕信 ゆる~い話】日本競馬独特の戦法「まくり」 気づかれずに出し抜くのがポイント
レースでたまに見られる「まくる」という戦法ですが、日本競馬独特のものらしく、これがなかなか奥が深いんです。 どういうケースで、まくろうと思うかといえば、ペースが遅いのに後方に位置していて、そこにいると勝つ可能性がなくなると感じるときですかね。勝つ可能性を考えてというのが一番ですが、もうひとつは折り合いが付かなかったときにも、馬を解放させ、力みを取る意味ですることがあります。 実際に、まくるときは、コーナーでは行きづらく、外を通ることになるので距離をより多く走らなければなりません。直線ではコーナーよりは距離ロスは少なくなりますが、前の馬(騎手)に気づかれる可能性も増します。まくりは、気づかれないように出し抜くことがポイントです。 ハナを譲りたくない馬が逃げていたとしたら、まくりに気づかれるとペースを上げられ、阻止されることもあります。そうなるとまくり切れず、脚だけ使ってしまうことになるわけです。 コーナーが4つ以上のレースで逃げていて、まくられないようにするには、コーナーでペースを落として、直線は逆に少しペースを上げたり、あるいはラチから少し離れて走ったりすることで後続馬を外に振る感じにすることで、まくりづらくしようと考えますかね。まくる方がひと呼吸でも躊躇(ちゅうちょ)してくれれば、まくられにくくなります。 まくる戦法には、リスクがあります。ただ、そういう駆け引きも競馬の醍醐味(だいごみ)だと思いますし、ファンの皆さんにはそこまで予想して楽しんでもらいたいと思います。 (JRA騎手)※隔週水曜日掲載