三菱商事・三井物産・丸紅…大手商社の4―6月期、5社当期増益もくすぶるリスク
大手商社7社の2024年4―6月期連結決算(国際会計基準)が5日出そろい、5社が当期増益となった。成長分野への事業シフトに向けた資産売却やエネルギー事業などでの収益の積み上げに加え、円安に伴う海外収益の円換算値の増加が業績を押し上げた。一方、足元では日銀の追加利上げなどを背景に円高が進行。中東情勢の緊迫化に伴う世界経済の混乱懸念も強まり、下期にかけては収益が圧迫されるリスクがくすぶる。 三菱商事は豪州の原料炭事業で比較的品位の劣る二つの炭鉱を譲渡して969億円の売却益を計上するなどして、当期利益は前年同期比11・5%増の3543億円となった。期初時点で4―6月期偏重の利益を想定していた通り、25年3月期連結業績予想に対する進捗(しんちょく)率は37%と高くなっている。 三井物産もインドネシアの火力発電事業やブラジルの貨物輸送会社の一部株式の売却で合計768億円の利益貢献があった。当期利益は同9・2%増の2761億円だった。 丸紅はみずほリース株式の追加取得に伴う負ののれん発生益に加え、英国での好調な再生可能エネルギー由来の電力小売り事業が当期増益に寄与した。 住友商事は前年同期に計上した米国のタイヤ関連事業における売却益の反動減で当期減益となったが、ベトナムの火力発電所の稼働などがプラスに寄与し、一過性要因を除くベースでは当期増益だった。 また円相場が前年同期に比べ20円程度安い1ドル=155円近辺を中心に推移したことも、各社の当期利益を押し上げた。他の海外通貨も含む円安影響で三井物産は230億円、丸紅は約90億円のプラス効果があった。 一方、足元では円相場が同142円近辺まで円高が進行している。市場では、日銀が7月末に続き年内にさらなる追加利上げを実行するとの見方や、米国で9月に利下げが始まるとの観測が広がって円高圧力が強まっている。 各社は通期の想定為替レートを1ドル=140―145円近辺に設定しており、業績予想を下方修正するほどの水準には至っていないが、当期利益の上振れ余地は限定されつつある。 また中国景気の不調に加え、足元ではイスラエル・パレスチナ情勢がさらに緊迫化している。三菱商事の野内雄三最高財務責任者(CFO)は通期予想について「商品市況の不確実性や事業環境の不透明性を踏まえ慎重に見極める」とした。