高校の先輩・山崎福也を目標に、常廣羽也斗からのメッセージも胸に リスク恐れず「プロ一本」で勝負の青学大左腕
「めっちゃ緊張」した明治神宮大会決勝の先発マウンド
3年になっても、なかなかチャンスは回ってこなかった。2年の春、「後ろ」に控えてくれていた「力のあるピッチャー」たち、1学年上の常廣羽也斗(現・広島東洋カープ)と下村海翔(現・阪神タイガース)が先発でフル回転。2人ともドラフト1位指名を受けてプロ入りを果たした。 「よく、高校でも大学でも上級生に良いピッチャーがいたから、下級生の頃に出番が少なくて不運だったとか言われるのですが、僕は全然そうは思わなくて、そういうすごい人たちと一緒にやって、勝てるように努力することで自分が成長できるという考え方なんです。常廣さんも下村さんも、身体能力が高いし、体の使い方がうまい。だから、びっくりするほど大きくなくても、150キロとかを投げられる。『すごいな』と思うことばかりでした。でも、試合になったら、どこかで崩れることがあるかもしれない。僕はそこを任されるように、と。任されたら絶対に抑えなくてはいけない。打たれたら信頼がダウンするんで。そういう意識でやっていました」 そんな中で託されたのが、3年生のシーズン最後の試合、慶應義塾大学と戦った明治神宮大会決勝戦の先発マウンドだった。「めっちゃ緊張しました」と振り返る。 苦手な立ち上がりを乗り切ると、「こんな感じで打ち取れるんだ」というイメージをつかんで、5回を5安打無失点に抑える好投。2番手の下村につないだ。試合には敗れ、あと1勝で達成できた「大学四冠」には届かなかったが、大舞台でのパフォーマンスは確かな手応えになっている。
目標とする投手は日大三の先輩・山崎福也
4年生になった今春、進路について、チームメートの佐々木泰(4年、県岐阜商業)や西川史礁(4年、龍谷大平安)とともに「社会人は考えずプロ一本で」と宣言した。 安藤監督は当初、「社会人を経由して、もっとレベルアップしてからでも遅くはないのでは」という意見だった。何度か面談を繰り返し、「どうしても大卒で行きたい。指名がなければ野球をやめる覚悟で」と思いを伝えると、最後は「わかった。お前を信じる」と認めてくれた。 思いを結果で示そうと、春のリーグ戦は先発の柱として開幕から28回3分の2を無失点。優勝がかかった終盤の日本大学戦では1-0で自身初の完封勝利。シーズン4勝を挙げて、リーグの最優秀投手賞を受賞した。この秋は未勝利ながら、各カードの2戦目で先発を任されている。 1戦目先発へのこだわりはない。「どこで投げても、その時にベストな結果を出す。チームが勝つことが一番大事なので。その時に調子の良いピッチャーが投げたらいいと思っています」と言う。 仲の良かった常廣とは、よく「マックス何キロとか、そんなのどうでもいいよな。試合に勝てたらそれでいい」と話していたという。だから、150キロを投げたい気持ちも今はない。 「僕はスピードを求めたらコントロールが不安定になるので、まずはコントロール重視で」と言う。目標とする投手には、日大三の先輩でもある山崎福也(現・日本ハムファイターズ)の名前を挙げる。山崎のように、豪速球はなくても、チェンジアップやツーシームで打者を翻弄(ほんろう)するピッチングをいつもイメージしている。