103万円の壁を巡る協議決裂で来年度予算の成立難航も:与党は税制改正大綱決定へ
20日にも与党税制改革大綱を決定
2025年度の税制改正の方針をまとめた税制改革大綱を、与党は20日にもまとめる方向だ。しかし、国民民主党の協議が決裂した状況では、「年収103万円の壁」を見直す税制改正の方針も、暫定的なものとならざるを得ない。 与党が国民民主党に示した基礎控除額などを123万円に引き上げる案を示すか、あるいはもう少し国民民主党の主張に近づけ、引き上げ幅を拡大した案を示すか、検討していくだろう。 他方、「年収103万円の壁」には、年収が103万円を超えると所得税の支払いが生じるという壁以外に、大学生年代(19~22歳)の年収が103万円を超えると、その子を扶養する親の税負担を軽減する特定扶養控除がなくなり、親の負担が増えるという壁の問題もある。この点については、自公と国民民主党は、年収制限を150万円程度まで引き上げることでおおむね合意しており、それに沿った改革案が与党の税制改正大綱に盛り込まれることが予想される。 それ以外に、今回の与党税制改正大綱には、防衛増税も含まれる。防衛費増額とその財源の一部である防衛増税を政府が決めた際には、法人税とたばこ税を2026年4月に、所得税を2027年1月にそれぞれ引き上げる案を示していた。それによって、2027年度には1.1兆円程度の財源を確保する計算だった。 その後、自民党内での慎重意見から防衛増税の決定は先送りされてきたが、石破首相は、今年年末で決着させる方針を示した。所得税の引き上げは、所得税に新たに付加税を1%課す一方、復興特別所得税の税率を1%下げて、その課税期間を延ばす方針だ。その結果、家計の負担が当面増えるわけではない。 しかしながら、国民民主党との間では「103万円の壁」見直しで所得減税を議論しながら、他方で防衛増税の一環で所得増税を同時に実施するのは国民の理解を得にくいとの判断から、公明党が主導する形で与党は防衛増税の一環での所得増税を今回の与党税制改正大綱に盛り込むことをやめ、所得税分の増税開始時期は2025年に再び議論する方針を決めたのである。復興特別所得税の税率下げも見送りとなった。