国会審議を充実させる方法 野党の質問時間は少なくていいの?
民主的正統性は選挙結果だけでは不十分
第3に、議会少数派権は情報要求権としての性質をもっていることを、忘れてはなりません。特に議院内閣制では、議会多数派と内閣の政治勢力が一致するのが原則ですので、内閣・与党の側は、議会での公開の審議を避け、非公開の場で物事を決定しようとする誘因が働きがちです(法律の本質的な内容を命令に委ねる委任立法の増大も、そのような現象の一つの表れと言えるでしょう)。 しかし、国家による決定の公開性・透明性は、民主制の本質的な構成要素です。というのも、国家活動が民主的正統性を持つためには、政権担当者が選挙により選出されているだけでは不十分で、その活動・決定が適正なルールに基づくこと、また、有権者が政権担当者の判断内容を充分に知らされていること、が不可欠の前提であるからです。そうであって初めて、責任回路が効果的に機能するのであって、議会調査権や質問制度など、議会少数派の情報要求権に関わる制度を拡充することが、有権者への批判的な情報提供機能を持つことに、十分配慮する必要があります。 民主制や議院内閣制は、統治の一つの仕組みです。どのような仕組みも、それをうまく使いこなすには賢慮が必要となります。質疑時間の野党への傾斜配分の問題も、そのような視座の中で検討することが必要ではないでしょうか。
--------------------------------- ■赤坂幸一(あかさか・こういち) 専門は憲法、議会法、憲法史。京都大学法学研究科助手、金沢大学法学部准教授、広島大学法務研究科准教授を経て、2010年より九州大学法学研究院准教授。ベルリン大学法学部で客員研究員を務めた。編著に『初期日本国憲法改正論議資料――萍憲法研究会速記録(参議院所蔵)1953~1959』(柏書房)など