日本と国連の連携で「観光レジリエンス(回復力)サミット」初開催、「仙台声明」を採択、自然災害や危機発生時の影響防止・最小化に向けて
「仙台声明」を採択、今後の観光レジリエンスの指針に
サミットで採択された「仙台声明」では、今後の観光レジリエンスへの取り組みの方向性と、その枠組みを危機前と危機後に整理。観光にかかわる多様な関係者との連携、協力のもとに取り組みを進めていくべきであることを確認した。 危機前の取り組みでは、危機や自然災害による影響の予防と最小化を推進。具体的には、各地域の地理的状況や観光産業の特性を踏まえたリスク把握や評価をおこない、関係者の役割の明確化と連携体制を構築する。 また、アプリなどを通じたリスクの事前周知、発生時の迅速かつ正確な情報収集と発信をおこなうとともに、風評被害対策を進めていく。さらに、訓練などを通じて個人や組織の対応力を向上させる。 危機が発生した後の取り組みについては、影響の吸収と回復過程の適応・変革に努めていく。危機や自然災害からの教訓を観光戦略に活かし、観光関連事業の継続・再開に向けて官民連携を強めるほか、観光需要の回復期には、各地域の将来像に沿った新たな観光商品の開発を進めていく。 閣僚級会合の終了後、斉藤鉄夫国土交通大臣は会見で「持続可能な観光を実現するうえで、観光レジリエンスの向上は、今や世界共通の課題」との認識を示したうえで、「観光分野における復興や回復に関する経験や知見は、それぞれの国で蓄積されている。しかし、広域的な共有までには至っていない」と指摘し、サミット開催の意義を説明した。 さらに、自然災害が多い日本が世界でリーダーシップをとっていける分野であることを強調。「日本が観光レジリエンスの先進地となるべく具体的な取り組みを進めていき、第2回以降のサミットでは参加国を増やしていくとともに、世界に有意義な取り組みであることを知らせていく」と意欲を示した。
仙台市、サミットを契機に観光危機管理マニュアル作成
サミットが開催された仙台市は、東日本大震災からの復興に取り組んでおり、2015年には第3回国連防災世界会議が開催され、「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。 仙台市の郡和子市長は、「仙台市としては、『仙台声明』を踏まえて、アジア太平洋の各国と連携しながら、より一層観光レジリエンスの向上に取り組み、その重要性を国内外に発信していく」と発言。また、サミット開催を契機として、新たに観光危機管理マニュアルを作成したことを明らかにした。そのうえで、「観光事業者などの理解を得ながら、訓練やセミナーなどを開催し、観光客の安心安全に取り組んでいく」と付け加えた。 サミット初日には、各国閣僚の歓迎レセプションを仙台近郊の秋保温泉の老舗旅館で開催。また、市内では観光事業者向けへの事前のワークショップや市民向けの講座などをおこない、サミットの成功に向けて観光レジリエンスの機運醸成、理解促進の活動をおこなった。
トラベルボイス編集部