パラオ大統領選は接戦に 中国が台湾との断交圧力、米中との距離感が争点に
【台北=西見由章】台湾と外交関係を持つ太平洋の島嶼(とうしょ)国パラオで5日、大統領選の投票が行われた。再選を狙う親米派の現職ウィップス氏(56)が駐留米軍の受け入れ拡大を唱える一方、返り咲きを図るレメンゲサウ前大統領(68)は中国との関係強化にも前向きなバランス外交の姿勢を示す。中国が太平洋地域で影響力を強める中、米中との距離感が争点の一つで、接戦となっている。 パラオは200余りの島で形成され、人口は約1万8千人。1994年の独立時に発効した自由連合協定に基づいて米国に防衛を委ね、財政支援も受けている。 一方、パラオの国内総生産(GDP)の約4割を占める観光業では中国人客が大きな存在感を示してきた。中国当局は2017年にパラオへの団体旅行を禁じて揺さぶりをかけるなど、経済的圧力を通じて台湾との断交を求めている。 両候補とも台湾との外交関係は維持する方針を示しているが、中国側は今後も経済支援と引き換えに断交への圧力を強めそうだ。中国側の断交攻勢により、今年1月に南太平洋島嶼国のナウルが中国と国交を樹立するなど、台湾が外交関係を有する国は12カ国まで減少している。 実業家出身のウィップス氏はレメンゲサウ氏の義弟。中国の海洋進出による主権への脅威を背景にウィップス氏が米軍のプレゼンス拡大を掲げるのに対し、環境政策を重視するレメンゲサウ氏は慎重な姿勢を示す。23年にウィップス氏が導入した消費税についても「物価高騰を招いた」として批判している。