【このニュースって何?】ユニチカが繊維事業を売却へ → 産業に時代の流れってあるの?
重厚長大から軽薄短小への産業構造の変化
戦後すぐの日本で勢いのあった産業としては、石炭産業もありました。九州や北海道を中心に多くの炭鉱で採掘がおこなわれ、復興する日本のエネルギーを支えました。石炭は「黒いダイヤ」といわれ、企業は大いに潤いました。 しかし、50年代に中東などで大油田が発見され、世界は石油の時代に向かいました。日本でも「石炭から石油」へのエネルギー革命が起きました。60年代以降、炭鉱の閉山が相次ぎ、20世紀末には日本に炭鉱はほとんどなくなりました。 産業構造の変化を表す言葉として80年代によく使われたのが、「重厚長大から軽薄短小へ」という言葉です。重厚長大というのは、鉄鋼や造船などの重くて大きいものをつくる産業のことです。鉄鋼は80年代半ばまで日本を代表する産業でした。「鉄は国家なり」という言葉が示すように戦後の復興には鉄が必要だということから、政府は鉄鋼生産を重視しました。「傾斜生産方式」と呼ばれます。日本各地に製鉄所がつくられ、鉄鋼の生産量は急激に増えました。その後、中国や韓国の製鉄所建設を支援したり、経団連会長という経済団体のトップに鉄鋼メーカーのトップが就いたりするなどして、鉄鋼業の存在感は増していきました。 しかし、80年代半ばにあった円高不況でつまずきました。それ以降国内の鉄の需要が減ったり、中国などの鉄鋼メーカーの成長があったりして、日本の鉄鋼業は「構造不況業種」と言われるまでになりました。 造船業も戦後急成長した産業でした。「造船ニッポン」といわれ、世界一の造船大国になりました。73年には世界の造船量に占めるシェアが48%にも上りました。しかし、同年に起きた石油ショックで需要が急減し、その後、韓国や中国の造船業にコスト競争で負け、こちらも「構造不況業種」と言われるようになりました。 一方、軽薄短小というのは、その名の通り、半導体のように小ささや軽さを競うものをつくる産業を指します。当初は電機メーカーや機械メーカーがイメージされていましたが、ゲームメーカーやコンピューターソフトのメーカーなども含まれる使い方になり、そうしたものが成長産業とされました。 ただ、軽薄短小型の産業も世界の中で競争力を失いつつあり、今は国を挙げて半導体産業を誘致したり育成したりするようになっています。また、日本が比較的得意とするアニメや漫画やゲームなどのコンテンツ産業にもっと力を入れようとする動きもあります。 さまざまな栄枯盛衰がある中で、長く世界のトップクラスを維持している産業があります。自動車産業です。日本車は70年代に世界でシェアを伸ばし、今も世界のトップクラスを維持しています。世界市場を視野に技術とデザインを磨いてきたことが繁栄を持続させていると思われます。 産業の栄枯盛衰は時代の流れと密接に関係していることがわかったかと思います。ただ、将来の予測をするには、これからどんな時代になるかを予測しなければならず、簡単なことではありません。言えることは、どんな時代になってもどんな地域であっても必要とされるモノやサービスを提供する産業は衰えにくいということでしょう。当たり前のような結論になってしまいましたが、それ以上のことはわからないのでお許しください。
一色清 ジャーナリスト