これから不可欠となるのは「データのポジティブエコシステム」か?: 電通 のデータ部門リーダーに聞く、ポストCookie時代の考え方
ID活用と同時進行で、ターゲティングを使い分ける
分島:どこと組んでどのデータを活用するかを決めなければならない、ということですね。 濱口:そうです。とはいえ、企業のみなさんが施策のたびに選定し、個別に交渉するのは大変なので、電通では2016年から個人情報をセキュアな関係で繋ぐ環境づくりに取り組み、データクリーンルームの活用実績や知見を積み重ねてきました。そうして2022年に開発したのが、複数のデータクリーンルーム環境で分析・運用を一元管理するシステム基盤「TOBIRAS(トビラス)」です。 プライバシーが保護された環境で、プラットフォーム事業者の保有データと企業のファーストパーティデータなどを、ニーズに応じて柔軟に統合したり、分析したりすることができるので、昨年は年間1000件ものマーケティング施策にデータクリーンルームを活用していただくことができました。 分島:データ活用のほかにも代替ソリューションはたくさんありますが、どのような判断基準で選べばよいのでしょうか? 杉本:まずデータについて言うと、自社が保有するIDをどう活用するかを決めることが最優先事項です。投資した結果、獲得できたデータをきちんと資産化することがベースになりますから。 次に、目的に応じて大手プラットフォーム事業者や小売事業者など、外部のデータクリーンルームを活用することに視野を広げていくことも重要です。それに並行する形でGoogleのプライバシーサンドボックス、Webページの文脈解析によるコンテクスチュアルターゲティング、天気・気温・花粉・ネット上の話題など、ニーズの高まるタイミングを捉えるモーメントターゲティングという人単位ではない手法を、商品やサービス特性によって使い分けるとよいのではないでしょうか。 濱口:どうすればマーケティングの最終的な成果に繋がるか、この業種ならこれがおすすめ、という目利きの部分をわかりやすく絞って提案するのが我々の仕事です。クライアントのみなさんに代わり、擬似的にさまざまなパターンを経験しているようなものなので、幅広い業種の知見を活かした提案をしていきたいと思います。