18時に帰る若手を横目に残業...「管理職の罰ゲーム化」が加速する日本の職場
「筋トレ発想」を捨て 仲間をつくる
管理職の罰ゲーム化を改善するためには、管理職の個別対処に頼るのではなく、会社側の組織改革が必要なのは確かです。 例えば、プラントエンジニアリング大手の日揮では、部長の下に、プロジェクトを取り仕切る「プロジェクトコーディネーションマネジャー」と、部下のキャリアの面倒を見る「キャリアディベロップメントマネジャー」の2つの役職を置き、マネジャーの仕事を分割しました。管理職が増える分、会社の人件費は上がりますが、一人の管理職の負荷は確実に減るでしょう。 しかし、こうした企業は少数派です。会社側が何かしてくれるのを待っているだけでは何も変わらないのが現実でしょう。管理職の負荷を軽減するには、管理職自らが何らかの手立てを打つしかありません。 では、何をすればよいでしょうか。まず私が勧めているのは、先に述べたような「筋トレ発想」を捨てることです。 会社側が筋トレ発想に陥っている話はすでにしましたが、実は管理職自身も筋トレ発想に陥っていることは少なくありません。部下が思うように働いてくれなかったり、結果が出なかったりすると、「自分の能力やスキルが足りないのがいけない」「自分が正しいリーダーシップスタイルを身につければ、うまくいくはずだ」と自分のトレーニング不足にすべての責任があると考えてしまうのです。 しかし、大谷翔平選手が猛烈なトレーニングをして165キロの剛速球を投げられるようになっても、その球を誰も捕れなければ意味がないように、会社のチームも一人だけがトレーニングしても問題は解決しません。 また、日本の職場は優秀な人ほど仕事が降ってくるので、優秀であればあるほどマネジメントが難しくなるし、残業が増えます。自分を責めすぎるとメンタル不調を起こすので、過剰に自己責任だと思い込むのはやめましょう。 メンタルを守るために、もう一つお勧めしたいのが、「社内の管理職仲間をつくること」です。同じ会社の社員なのに、他の部署の管理職とはほとんど関わらず、ライバル関係だと思っていて話す機会があっても腹は割らない、という人は多くいます。 しかし、実は他部署の管理職も自分と似た悩みや苦労を抱えているものです。同じ会社の仕組みの中で働いていますから、悩みや苦労も似てくるのですね。 だから、他の管理職を"仲間"と考えて相談し合えば、少しは心が楽になります。 また一人では難しくても、複数の管理職と一緒に制度改革などを会社側に掛け合えば、何かが変わる可能性もあるでしょう。