小学5年生のとき母親が難病・ALSに ヤングケアラーの経験を糧に活動する19歳の青年に迫る
“ヤングケアラー”について感じること
そんな南光さんに“ヤングケアラー”についてどのように捉えているのかを聞いた。 「当時はあまり浸透していませんでしたが、ヤングケアラーという言葉はめちゃくちゃ広い概念だなと思っています。ケアのかたちはさまざまあることから、この概念をひとくくりにできないなと思います。また、ヤングケアラーを広める支援やパンフレットには分かりやすくイメージが作られているものの『遊ぶことができない、勉強が十分にできない』といった偏った認識や、可哀想なイメージで描かれていることによってスティグマを生んでいると思います。私は隙間時間でゲームをしていたのでヤングケアラーとは言わないのかな?と悩んだこともあり、自分がヤングケアラーだと気づけないようなきっかけを作っているラベリングや偏った発信は危険だと感じました」 また、同じヤングケアラーとしての境遇を持つ子どもに必要な支援については次のように語る。 「家庭の状況によって個別の対応をすることが大切です。子どもがケアしていることが明らかになっている家庭へは家庭の状況や、子どもが秘めている思いを慎重に汲み取るなど、境遇に合わせた個別具体的な対応が求められます。また共通して役立つのが、当事者同士のコミュニティを持つことです。お互いのストレスの共有や、同じような環境の仲間を持つことは心強いと思います」 南光さんは中学2年生のときに自律神経失調症の一部の起立性調節障害を患い、不登校を経験している。 このときのことについて「直接、母の介護が関わっていたわけではないですが、介護・勉強・部活という新しい環境が始まって疲れてしまったのかな」と話す。 自分では気づかぬうちにヤングケアラー自身にも負担がかかっている場合もある。周りが理解し、サポートできる体制が求められていると教えてくれた。
南光さんの現在の活動
現在、ヤングケアラーとしての経験から南光さんはInforaの始動に向けて準備を進めている。Inforaはあらゆる生活課題において必要な人に必要な社会資源の情報を届けることができるプラットフォームだ。 Inforaを作ろうと思ったのは、母親の介護中、必要な情報が見つけられないという状況に直面したからだ。例えば、目の筋肉を使いコミュニケーションをとる手段として視線入力装置がある。目の動きを感知するため、話せなくても意思の疎通を図れるのだ。しかし、南光さんがこの機械の存在を知ったのもお母さんの目の筋力がほとんどなくなった最近のことだった。 「Inforaではあらゆるタイプの情報を一つにまとめることをしています。課題当事者と事業者の方が一緒に意見を出し合ったり募集したりすることで情報データベースをともに作っていける、そのようなプラットフォームを目指しています」 活動を続けるなかで、ALS患者さんやヤングケアラーの方から「力をもらった」「自分のときにこんなプラットフォームがあったら何か使える資源があったかもしれない」という言葉をもらうことがあるそう。なかでも1番嬉しかったのは「私も勇気をもらったから一緒に何か手伝いたい」と伝えてもらったことだった。 今後の目標について「Inforaのトピックがあらゆる課題まで広がることはとても時間のかかることですが、まずはInforaのシステムを確立させることですね。特定のトピックに沿って展開することが少なくとも特定の誰かの役に立ってもらうことを実現していきたいです」と語ってくれた。