食文化と観光で誘客策探る 観光庁採択ガストロノミーツーリズム推進へ 鹿児島県・笠利町のホテルで実証事業
地域の食文化を通じて、高付加価値の観光地づくりを目指す「ガストロノミーツーリズム」の実証事業が11日、奄美市笠利町のホテル・ティダムーンであった。インバウンド(訪日外国人観光客)対象の旅行商品開発・造成を目的に、米国トップシェフが新メニューを開発。参加者らは絶景を望む屋外ダイニングで地元食材をふんだんに使った料理を堪能し、郷土食材を生かした誘客の可能性を探った。 ガストロノミーツーリズムは、文化や歴史を絡めて食を楽しむ旅。美食と観光を掛け合わせた取り組みで、事業はインバウンドの地方波及を進める観光庁が公募。沖縄・奄美エリアは、両県で組織する琉球ガストロノミーツーリズム共同企業体が採択された。
実証事業では、熾火(おきび)調理のパイオニア的存在で料理店「スモークドア」(神奈川県)の米国人シェフ・タイラー・バージス氏が「自然・景観」をテーマに新メニューを開発。美術館に通い田中一村の絵画から着想を得た「伊勢エビと熱帯魚」「マコモダケとモクズカニ」「島豚の地中焼き」など、郷土食材を使った7品のランチメニューが振る舞われた。 オーシャンビューのダイニングでは、料理家や在日外国人、富裕層向け旅行会社、宿泊業者、生産者らの美食家約20人をゲストに招き、屋外テーブルでもてなした。夜光貝や塩豚、車エビなどの地元食材が目の前で次々と調理され、フレンチやイタリアン風の創作料理に舌鼓。ランチではスモーク香るレモンサワーなど食に合う飲み物なども一緒に提案された。 食材で助言をしてきた奄美食文化研究家の久留ひろみさんは「新しい食文化の扉が開く感じを受けた。高付加価値は生産者と共に生きることにもつながる。島にフィードバックしてほしい」と話し、ティダムーンの肥後勝代代表取締役は「新しい料理の数々に驚いた。富裕層の取り込みなどで生かしていきたい」と述べた。 事業は2023~27年の5年間。今後も食文化を通じた地域の観光地づくり事業を奄美と沖縄の両県で進めるという。