本業に生かす経験? 年収の補完? 社員副業にメリットも普及にはなお時間
社員の副業を積極的に認める会社が徐々に増えつつある。年収の減少や倒産リスクといった切実な事情を背景に、副業解禁を求める声も高まっている。企業側は、社員が副業での経験を本業に生かすといった好循環を当て込む。ただ、依然として大多数の企業で禁止されており、一般的に広まるにはなお時間がかかりそうだ。 「低所得層」とは、どのくらいの収入の人たちのことなのか
ロートが副業を認めた理由とは
製薬大手のロート製薬は2016年2月、多様な働き方を推進する取り組みの一環として「社外チャレンジワーク」制度を立ち上げた。休日などの就業時間外で本業に差し障らないという条件付きで、社会貢献をする趣旨に合えば、社員の副業を容認する。既に60人超から応募があり、薬剤師の資格者がドラッグストアの店頭に立つといった形で既に働き始めているという。 ロート製薬は、お金に換算できない「プライスレス」な経験を社員に積んでもらうため、「社外の人と共に働くことで、社内では得られない大きな経験ができ、自立・自走できる社員を育てられる」として副業制度を設けたと説明する。 一般的に、副業をしたい理由で最近人気を集めているのは、やりがいや経験といった金銭面以外のメリットだ。一般に、会社員は会社の看板を背負って取引先やお客さんと接する。長く勤めていると、会社独自のルールが染みつき、それが常識と思い込んでしまう嫌いがある。一転して副業で他社に身を置いてみると、社風や商品、戦略といったさまざまな違いに気付かされ、自社を客観視できるきっかけになる。また、自社で培ったノウハウが多かれ少なかれ副業先で歓迎され、本業で苦労したことが報われた気分にもなる。逆に、副業で増えた人脈や知識が本業で生かせることもあるだろう。 増収を続け、過去最高の連結純利益を上げている安定企業が、副業という新たな取り組みに挑むのは珍しい。副業を認めている企業は他に、日産や花王、ITのサイボウズなどが知られている。
減り続ける会社員の平均年収
会社員にとって副業のメリットは大きい。1つは収入源を増やせることだ。国税庁が毎年実施している民間給与実態統計調査によると、会社員の平均年収は1997年の467万円をピークに減り続け、世界的な金融危機、リーマン・ショックに見舞われた直後の2009年には405万円まで急減。近年も410万円前後で推移し、上昇の兆しは見えない。そうした中、補完的に収入を得たいという需要は拡大している。 また、非正規雇用の増加を背景に、企業が人員削減するリスクはつきまとい、雇われる側にとっては不安定な時代だ。しかし副業をしていれば、万一リストラで退職を余儀なくされても、すぐに食い扶持が無くなるわけではない安心感がある。退職と同時に無職となるのに比べ、精神衛生上の健全さを保てる。