ハートを震わせる! 〈マセラティ〉グレカーレ トロフェオ
“本能が沸き立つクルマ”というものに、ときどき出会えることがある。ありがたいことに新車を乗り倒して試乗記を書くという仕事に就いているものだから、それこそスーパーカーから軽自動車まで、あらゆる市販車のステアリングを握る機会には恵まれている筆者。だけれどこのご時世、意外にドキッとさせてくれるほどのパッションを、走り出しの最初から与えてくれるヤツは珍しくなってしまった。むろんそれは悪いことではなくて、それだけ乗る人を選ばない、高性能なクルマが増えているということでもあるのだけれど、こんな時代だからこそドキッと心震わせたいのが“クルマニア”のサガだったりして。そんな筆者のハートを久しぶりに震わせたのがコチラ。〈マセラティ〉のSUV、グレカーレ。なかでもトップグレードである、“グレカーレ トロフェオ”をご紹介したい。
“レヴァンテ”に続き、同社2つめとなるSUVがこのグレカーレ。日本には2023年に導入。ずいぶん先に発売されていたレヴァンテよりもひと回り小さく、日本の道にもマッチしそうないい感じのサイズだ。全長4859×全幅1979×全高1659㎜。隣に立っても威圧感はない。
随所に丸みを感じさせるデザインもかわいらしい。プレミアム感は存分に香らせているけれど、どこかぽってりしたシルエットは街に置いても馴染みそうだ。 最上級であるトロフェオは、パーソナライズといっても過言ではないくらい、いろんなオプションを選べるのも嬉しい。ボディカラーや内装色はもとより、キャリパーのカラーなども選択肢がある。イタリアンデザインを思う存分自分色に染められるのもユニークな部分だ。
そんなとっつきやすいエクステリアの反面、インテリアはさすが〈マセラティ〉。とにかくセクシー全開なのだ。ひと昔前までの〈マセラティ〉に比べたら、グレカーレは驚くほどデジタライズされている。フル液晶の美しいインパネ、メインディスプレイも2枚仕立てになり、センターコンソール上の物理ボタンはほぼ排除されてミニマイズされている。無機的になりがちなこの部分の表情が、〈マセラティ〉の手にかかれば寡黙な美女の口許のような表情を持つのが実に不思議なのだ。ゆったりしたシートのサイズ、そこに施されたステッチの色の選択などなど、すべてから醸し出される雰囲気が悶絶モノだから、是非座って確かめてほしい。