武道館で中止は「想定外」…保険加入せず

　加納さんが、台風の暗雲を感じたのは開催３日前の１３日だった。「台風発生で中止になる可能性を考え、武道館側との調整をしてくれるイベント会社に、日程の振り替えが可能か確認しました。イベント会社からは、代替日程はなく、使用料は全額必要と言われました」。中止に備えての損害保険は、加入していなかった。「室内で中止というのは想定外でした」

　開催前日の午前１１時の段階では、ライブを決行するつもりだった。「次にいつ出来るかわからないし、多額のお金が動いてしまっているので…。でも午後３時の段階で、電車が止まるとか関東直撃の可能性が高いなどといった報道に接したので、無理だと思いました」

　中止決断の背景には、地方のファンの存在があった。「ファンと一緒に２年間、武道館を目指してきたのに、地方のファンは来られない。そんな状態でやっていいのか。２回目の武道館があるかなんてわからない。最初で最後かもしれないんだったら、ファン全員に見てほしいと思いまして」

声を上げて泣くメンバー、当日は生配信

日本武道館公演が中止となり、無観客の武道館から生配信を行う「Ａｐｐａｒｅ！」（８月１６日）

　中止決定を聞いたメンバーは、全員、声を上げて泣いていたという。「『どうしてもやりたい』と。初めてといっていいぐらいメンバーが感情的になって…」とマネジャーの大里牧子さんは振り返る。「でも『ファンを一人も置いていかないということでやってきたんだから…』と話して、ある程度納得させました」

　公演予定だった１６日に、メンバーは武道館から、中止を報告するユーチューブ生配信を行ったが、それは当日正午に決まった。加納さんは「メンバーの気持ちを、どうしてもファンに伝えたかった。でもメンバーは、配信が出来るような状態ではありませんでした。大声は出すし、泣いているし…。２時間ぐらい話して説得しました。トークだけ配信するとお通夜のようになるので、武道館で発表予定だった新曲も歌うことにしました」。歌った曲は、「大快晴ボンボヤージュ！」。当日の天候とは逆のタイトルだった。

　武道館公演が中止となった後、メンバーたちは「リベンジ！武道館」と題した公演を「Ｚｅｐｐ　Ｄｉｖｅｒｃｉｔｙ」（東京都江東区）で行ったが、９月２２日のライブで、１月２９日の武道館公演が発表された。予想外に早い「リベンジ」実現に、メンバーと詰めかけたファンは喜びに沸いた。