コンセプトは「天晴れ」時代とは変わらなかったが、加納さんには、以前の自身のプロデュース手法に対する反省もあった。「『天晴れ』の頃は、僕がやりたいことを、メンバーの気持ちを無視してやっていた部分がありました。思いが先行してしまった。メンバーには申し訳なかったって思います。『Ａｐｐａｒｅ！』では、メンバーの意見を中心にやっています」

まず「日比谷野音を満員に」

　まだコロナ禍の中での再出発だったので、ライブも思うように出来なかった。メンバーはレッスンに励んだり、オンラインでの活動に力を入れたりして力を蓄えた。そして、２０２１年７月の５周年記念ライブで、日比谷野外音楽堂でのワンマンライブを目指すことが発表された。加納さんは「メンバーからは、『武道館に立ちたい』という言葉もありましたが、現実的な目標として、『日比谷野音を満員にしたい』ということになったんです」と振り返る。

　「Ａｐｐａｒｅ！」は、同年１０月に日テレの「アイドルオブザイヤー２０２１」で優勝し、これを契機に、テレビでの露出も増えた。ＣＳ日テレでは冠番組を持つことが出来、番組内では日比谷野音でのライブを目指すメンバーの奮闘ぶりが取り上げられた。そして、２０２２年９月に待望の日比谷野音ライブを開催、今度は日本武道館のワンマンライブを目標にすることが発表された。

　また、同年１１月発売の楽曲「ぱ　ぴ　ぷ　ぺ　ＰＯＰ！」がＴｉｋＴｏｋで大流行、知名度を上げた。同年から今年まで、「Ａｐｐａｒｅ！」は「玉ねぎ食べるぞ！ツアー」を繰り返し、武道館公演への機運を高めた。ここでの「玉ねぎ」とは、日本武道館の頂上にある「擬(ぎ)宝(ぼ)珠(し)」のこと。それほど、武道館への思いは強かった。２０２３年８月の「ＴＩＦアイドル総選挙２０２３」での優勝を経て、今年１月に、８月１６日の武道館ライブ開催が発表された。

　加納さんは、「８月１６日はお盆だし、金曜日だし、一番来やすい日程と思って申し込みました。台風のことはまったく考えなかった」と語る。公演には、武道館使用料やセット代、人件費などで数千万円の費用がかかっていた。