振り返る『極悪女王』の時代 1985年、新日本VS全日本の興行戦争、旧UWFの帰還、ブーム絶頂期の長与vsダンプの髪切り戦――
新日本のゴタゴタとは対照的に、全日本ではリング上の闘いが充実していた。秋には地上波ゴールデンタイムでの中継が6年半ぶりに復活し、10・21両国でNWA世界ヘビー級王者リック・フレアー vs AWA世界ヘビー級王者リック・マーテルのダブルタイトルマッチが実現した。2冠統一こそならなかったものの、NWAとAWAのヘビー級王者を対戦させたのは、世界の馬場の面目躍如と言えるだろう。 リングでは第一線を退いていた馬場だが、ジャパン勢の全日本侵攻から決起、長州との初対戦を「世界最強タッグ決定リーグ戦」で実現させた。試合は馬場&ドリー・ファンクJr組vs長州&谷津嘉章組で、30分フルタイムドロー。「オレたちの時代」を叫ぶ長州に馬場が底力を見せつけた形である。また、長州には11月大阪城ホールで鶴田との60分フルタイムドローもあり、全日本勢の意地が長州に勝ちを許さなかったとも考えられる。 この年の終わりには、新日本と全日本が歩み寄りをみせた。“過度な引き抜きはもうやめにしよう”との風潮が両団体に芽生えたか、12月13日に馬場と猪木が極秘対談をおこない、選手引き抜き防止協定を締結するに至ったのである。後日にはハワイにて馬場、猪木、坂口によるトップ会談も実現しており、スタン・ハンセン、アブドーラ・ザ・ブッチャー、タイガー・ジェット・シンらをはじめ81年から続いてきた引き抜き合戦に一応のピリオドが打たれたのである。 全女では、前年夏に爆発したクラッシュギャルズ人気が85年に頂点を迎える。『炎の聖書(バイブル)』以後もシングルを継続してリリースし、歌番組や舞台をはじめ、さまざまな芸能活動をプロレスと並行させてきた。クラッシュ人気を盛り上げたのは10代の少女たち。会場は法被に身を包みポンポンを手にした女性ファンで膨れ上がり、長与と飛鳥は少女たちのあこがれとなった。新人オーディションには第2のクラッシュを夢見る女の子が全国から殺到。テレビ中継においても週末夕方や平日のゴールデンタイムなど、多いときで週3回も全女の試合を見ることができたのである。