【アメリカはまだ「男性優位社会」?】世界でもまれな女性大統領が誕生していない国、大統領選後に再燃してきた社会論議
「女性蔑視」でも当選するトランプ
上記のような指摘がある一方で、近年、米国では遅まきながら、婦女暴行問題への対処をめざした動きが出始めてきた。 その一つが、1994年に米議会で成立した「婦女暴行取締法(Violence Against Women Act)」(VAWA)であり、成立後しばらくは、暴行件数も減少に転じたかに見えた。 ところが、その後、2020年から再び増加傾向にある。 「VAWA」に対して、銃砲所持団体からの強い圧力により、家庭内暴行歴のある人物の銃砲所持を容認する付帯条項が加えられたことが背景として指摘されている。 さらには、法律は成立したものの、米国社会ではいぜんとして、女性をたんなるセックスの対象者とみなし、それを他人の面前で吹聴し、あるいは女性たちが被害にあっても表ざたにしたがらない社会的風習が存在することも問題視されている。 とくにこの点に関連して、悪名をとどろかせた人物の一人がトランプ氏にほかならない。2016年大統領選に立候補した当時、親しい友人相手に、女性の身体を侮辱する言葉や卑猥な性表現を乱発する会話の録音テープが暴露され、一時マスコミの話題をさらったこともある。 先の大統領選挙戦でも、民主党陣営からは繰り返し「misogynist」(女性蔑視主義者)のレッテルを貼られてきた。実際、トランプ氏はクリントン氏やハリス氏の容貌、人格を蔑む言葉を控えることはしなかった。 それでも、クリントン氏を相手に戦った2016年大統領選、そしてハリス候補との今回の選挙のいずれにおいても、トランプ氏は勝利を収めることができたのである。
白人社会に残る考え
今、これらの選挙結果を振り返ると、勝因と関連した共通点が2つ挙げられる。すなわち、白人男性有権者および白人女性有権者の投票動向だ。 今回大統領選投票日直後のCNNテレビ出口調査によると、白人男性有権者の60%がトランプ氏に投票したのに対し、ハリス氏は38%にとどまった。また、白人女性有権者も53%がトランプ氏に投票、ハリス氏は46%と過半数に届かなかった。 司会者のリードさんが「白人女性有権者たちが期待を裏切った」とコメントしたのは、このことを指している。しかし、黒人女性有権者は、92%がハリス氏に投票した。 さらに、全米人口の約11%を占める「WASP」(白人でアングルサクソン系でプロテスタント)に限定した出口調査によると、実に72%と圧倒的多数がトランプ氏に投票したのに対し、ハリス氏に対する支持票はわずかに26%だった。