58歳・川上麻衣子さん幼少期を過ごした「北欧の冬」の思い出。極夜とキャンドル、心地よい暮らしの工夫
「明かり」は北欧インテリアの大事な要素
この季節、北欧の人々は長い夜をセントラルヒーティングで隅々まで暖められた部屋で静かに過ごします。 暗い冬だからこそ、居心地よく暮らすための工夫が生まれインテリアに対するセンスが磨かれたのだと言えそうです。カーテンをするという習慣がないスウェーデンではクリスマスに向けて窓を星のオブジェやキャンドルに火を灯して、どの家もきれいに飾ります。 スウェーデン人にとってこのキャンドルは、絶対に欠かすことのできない大切なアイテム。暗い冬に限らず、白夜の夏であってもテーブルの上では常にキャンドルの炎が揺らいでいます。友人を家に招くときには玄関の外にキャンドルを灯し、その家ではホームパーティーが行われることを教えてくれます。
雪でつくる小さな「かまくらキャンドル」もすてき
雪が降れば、即席の小さなかまくらを創ってキャンドルを灯したこともあります。友人の家に呼ばれ、家族と一緒に大量の蝋を鍋に溶かし、好みのクレヨンで色づけし、ひもをたらし何度も何度も繰り返し引き上げてロウソクを手づくりしたことありました。 こうして振り返ってみるとスウェーデンで過ごした思い出は、夏よりも冬の方が記憶に残っているのかもしれません。 蛍光灯を使わないスウェーデンでは、間接照明を上手に使い、優しく温かみのある部屋を演出しています。住宅街を歩けば、1つ1つの窓がすべて、インテリア雑誌を切り取ったような美しさに目を奪われます。
スウェーデンのクリスマスは?
そしていよいよ訪れるクリスマス。12月24日は朝食に「ミルク粥」を食べることから始まります。普段あまり食卓に並ぶことのないお米ですがイブの朝だけは、甘く味付けされたお粥を食べる習慣があります。そして夜になるとツリーを囲んで家族が集まり、プレゼントに子どもたちが喜ぶ賑やかな時間を過ごします。 翌朝は早朝に出かける準備をして、教会のミサに参加し讃美歌を歌い、クリスマスをお祝いするのが慣習です。雪が降った年であれば、真っ暗な夜道で雪をきしませながら歩いた先に、無数のキャンドルが教会へと導いてくれる景色に心を洗われるようです。 少し余談になりますが、スウェーデンではクリスマスに働いてくれる「トムテ」という妖精トロールがいます。 人間の家の屋根裏や馬小屋に住むトムテは、家を守り家畜の世話をしてくれるなど農家の守り神のような存在と言われています。 働き者ではあるのですが気難しい性格で、感謝を忘れてぞんざいに扱ってしまったりすれば機嫌を損ねて仕返しをしたり、家から出て行ってしまったりするのだとか。イブの朝にミルク粥を食べるのは、じつはこのトムテのためのものなのだそうです。すてきなクリスマスが訪れますように。
川上麻衣子