自動車の「運転支援システム」、実は危険だった? 人間の学習能力が裏目に―衝撃の米国研究が明らかに
テスラ実験の警告頻発
次に、IIHSとマサチューセッツ工科大学エイジラボの研究チームは、テスラモデル3を使った実験を実施した。この実験では、テスラのオートパイロットや半自動運転技術を初めて利用する14人が参加し、4週間にわたり運転中の挙動がモニタリングされた。 14人の参加者は合計で約1万9000kmを走行し、オートパイロット機能使用中に3858回の注意喚起警告を受けた。その半数近くは、少なくとも片手がハンドルに触れているものの、トルクセンサーが検知するほどの圧力が加えられていない状況で発生した。この結果、システムが 「手放し運転」 と判断し警告を発したケースが多かったことが明らかになった。今回の調査結果は、運転支援システムがもたらす利便性と課題の両面を改めて浮き彫りにしている。
オートパイロットの落とし穴
システムは、一定時間以上ドライバーのハンドル操作を検知できなかった場合、最初の注意喚起を発し、中央ディスプレイにハンドル操作アイコンを表示する。また、青色の点滅ライトとともに、ドライバーにハンドルを軽く回すよう指示するメッセージも表示される。 ドライバーは、ハンドルをしっかり握り、わずかに動かすことで操作をしていることを示せる。システムがこれらの反応をすぐに検知できなかった場合、視覚および聴覚による警告が段階的に発せられる。それでも反応がない場合、オートパイロットは車両を停止させ、その後の運転中には機能が利用できなくなる。 注意喚起を受けたドライバーのほとんどは、3秒以内にハンドルをしっかり握って警告に反応した。最初の注意喚起への反応時間は、1週目以降約0.5秒短縮された。 ドライバーは警告に迅速に反応するようになったが、実際には警告前後に注意がそらされる時間が増加していた。システムの警告に慣れた結果、反応は速くなったものの、その間に気が散る時間が長くなっていた。 さらに、オートパイロットシステムの使用期間が長くなると、警告が解除された後に再びハンドルから手を離す時間が短縮される傾向も見られた。人間の ・学習能力 ・適応力 が裏目に出て、警告に対する反応が条件反射的になり、結果的に安全運転支援の効果が薄れてしまう恐れがある。ドライバーの注意が散漫になる時間が長くなるほど、事故に巻き込まれるリスクは増加する。 さらに、短時間の注意散漫が頻繁に発生するようになると、実際に運転に集中している時間が意味を持たなくなってしまう可能性がある。