日本通信が「ネオキャリア」に向けて一歩前進 迷惑電話撃退や音声翻訳など、電話機能の拡張も具現化
接続合意に続いてIMS導入も決定、接続試験も来春スタートへ
フルMVNOとしてサービスを開始するには、(1)ドコモとの音声相互接続をして、(2)日本通信自身がIMSを持ち、(3)SIMカードやeSIMシステムを構築した上で、(4)発着信する事業者との接続を行い、(5)緊急通報との相互接続もしなければならない。冒頭で述べたように、ng-voiceのIMSを採用するのは、ドコモと音声相互接続をする準備の一環で、この中では(2)に該当する。 電話番号だけで音声通話が他社の端末につながるのは、キャリア同士が相互接続をしているからだ。データ網だけを相互接続しているライトMVNOの場合、音声網はMNOのものをそのまま使うだけで、その必要がない。これに対し、日本通信が目指す音声網まで含めたフルMVNOは、(4)のように、自ら他社や緊急通報機関と相互接続をしていかなければならない。 日本通信が予告しているサービスインまで、まだ1年半程度の猶予はあるが、「ドコモのネットワーク改修が2026年に終わるより前に、他社との相互接続や緊急通報をやっておく必要がある」(同)。ng-voiceの導入を最終決定したのは、取材日当日。ここから同社のプライベートクラウド上にIMSを構築した後、「来春には緊急通報や固定網との接続テストをしていく」(同)。 とはいえ、相互接続する相手の数は多く、特に緊急通報機関は「統廃合でだんだん減っているが、786カ所もある」(同)。これは、消防の数が多いためだ。119番通報は、各市町村が設置する消防本部が管轄地域ごとに割り当てた消防指令センターで受ける体制が構築されている。そのため、同じ119番でも、実際には基地局の設置場所でセンターを特定し、それぞれの地域の消防指令センターに接続している。音声通話を開始するには、この1つ1つと接続していく必要がある。 スピーディーな導入が可能なng-voiceのIMSは構築できたとしても、実際の接続テストを来春までに始められるのか。この疑問に対し、福田氏は「実は既に消防署はまわり終わっている」と話す。2024年夏までに、これを完了させていたとのこと。福田氏自身が現地まで行ったわけではないが、「社員からは八丈島や利尻島に行ってきますという出張申請も受けた」という。人海戦術で、緊急通報機関との相互接続の見通しも既に立てていたというわけだ。 こうした日本通信側の作業と並行し、ドコモ側が音声相互接続を可能にするため、ネットワークを改修していく。接続ができれば、日本通信は2026年5月24日にフルMVNOとしてのサービスを開始できるようになる。ng-voiceとの提携や、同社のIMSを採用したことで、ドコモとの音声接続合意に次ぐ大きな山を1つ超え、次のステップである接続テストに進めるようになった。フルMVNO化で実現できる同社のサービスも徐々に明かされており、着々とその準備が進んでいることがうかがえた。
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