「福の神」仙台四郎、愛され150年 商売繁盛願い飲食店に人形やイラスト
仙台市の飲食店などに、商売繁盛の「福の神」として人形やイラストが飾られる男性がいる。幕末から明治に実在した通称「仙台四郎」。丸刈りで腕組みして笑う青年期の姿は150年近く市民に愛され、町おこしや、東日本大震災からの復興のシンボルにもされた。(共同通信=山田純平) 郷土史などによると、四郎は1850~60年代ごろ、仙台藩に仕える鉄砲鍛冶屋の四男として生まれた。知的障害があったとみられ、意思疎通は困難だったという。 福の神となった由来は、市中を歩き回って入った店は必ず繁盛するという逸話だ。評判が広がって当時の新聞にも登場し、遊郭や料亭から引く手あまただったといわれる。ただ、死没年や墓所は分かっていない。 四郎の兄・太郎のやしゃごに当たる東京都在住の芳賀朝子さん(51)は「四郎がほほ笑み、店主がほほ笑み返す。障害のあった四郎を受け入れる優しさを持ち続けた店が繁盛したのではないか」と推測する。
1986年、仙台市中心部の商店街が振興のため四郎グッズを製作した。この時に成功を願って祈祷会を実施した寺院「三瀧山不動院」では現在も人形などを販売しており、全国から客が求めに来るという。加藤隆弘住職(76)は「特にゆかりはないんです。これほど有名になるとは思わなかった」と笑う。 親戚筋の芳賀さんも2011年の震災後、四郎を通して東北の魅力を発信する「すまいる四郎プロジェクト」を立ち上げた。四郎をかわいいイラストにしたPRキャラを作り、観光マップやイベントのチラシに掲載。関連グッズは障害者施設に製作協力を依頼した。 東北がいつまでも「被災地」でいいのかとの思いから行動したという芳賀さん。「復興に一役買えば四郎も喜ぶんじゃないかな」と話した。