イトーヨーカ堂が「リテールメディア」事業を加速、「広告に頼らない」独自マーケティングに挑む理由
■ メーカーと協業して「商品の良さを伝える」 ──2024年3月、イトーヨーカ堂では「リテールメディアプロジェクト」が発足し、リテールメディア事業が本格始動しました。既にメーカーの広告出稿も行っているとのことですが、具体的にはどのようなプロジェクトなのでしょうか。 篠塚麻友実氏(以下敬称略) 私は2010年より販売促進部の担当業務を行っており、2021年から総括マネジャーを務めています。さらに今年度からは商品本部直轄のリテールメディアプロジェクトのリーダーも兼務しています。 販売促進の仕事を通して考えるようになったのは、お客さまのニーズが多様化する中で、お客さまに対する価値提供はメーカー様の営業ご担当や販促ご担当の方々と共に考えて取り組むことが極めて重要だということです。 リテールメディアプロジェクトではお客さまを中心に据えて、メーカー様の課題を伺いつつ、協業しながら「お客さまにどのように情報を伝えていくか」「商品のよさが伝わるコンテンツとはどのようなものか」を共に考え、コミュニケーションをしていこうと考えています。 望月 篠塚が「お客さまを中心に」と申し上げた通り、あくまでも「お客さまの購買体験を良いものにするために、何ができるか」がリテールメディアの肝になると考えています。 米国の大型スーパーの視察に行ったことがあるのですが、リアル店舗の中にリテールメディアがあふれているかというと、そんなことはありません。なぜかというと、そもそも米国の小売企業にとっての顧客接点はオフラインとオンラインが高度に統合されているからです。オンラインを使うお客様向けには、あくまでもお客さまのオンライン上の体験を起点として、メディアが展開されています。 日本の小売市場は米国よりも、実店舗を利用するお客さまが多くを占めています。そういった意味では、店舗における体験をもっと良くすることも必要ですし、ECサイトでの丁寧なコミュニケーションも必要です。 まずは現場の実態に合った日本独自のリテールメディアの形を模索することが、リテールメディアプロジェクトの役割になると私たちは考えています。
三上 佳大