「火山だから美しい…」死者58人 行方不明者5人の御嶽山噴火から10年 集う人たちがより安全に登れる山へ
父親: 「(登山が)大好きなんですよ。色々勉強してきてね」 男の子: 「いろんな人が亡くなって。火口とかそういうのが気になったから」
■火山灰にまみれた登山者で混乱した山小屋 今は「命の砦」に
噴火以降、なによりも進められたのが「防災対策」だ。要所にある避難小屋には、ヘルメットや防寒具などが揃えられたほか、噴石対策のために、防弾チョッキに使われている素材「アラミド繊維」で屋根が補強された。
9合目にある『王滝頂上避難施設』は、もともとは「山小屋」で多くの登山者で賑わった場所だったが、今は「避難施設」に変わっている。
当時は、灰と噴石に襲われ、小屋の中は火山灰にまみれて混乱する登山者であふれた。周辺では、亡くなった人もいた。
安全対策はすすめられたが、噴火口に近いこともあり、宿泊することはできなくなった。今は避難施設として、登山者を守るための「命の砦」へとかわっている。
■賑わい戻った山小屋 それでも「火山であることを忘れないで」
山頂から1キロほどの場所にある山小屋『二の池ヒュッテ』も、噴火の被害を受けた場所だ。
二の池ヒュッテでは、噴石が屋根を突き破った部屋を今も残していて、希望する客に見せて噴火の恐ろしさを伝えている。オーナーの高岡ゆりさんは「ここを直して、ここにお客さんに泊まってもらう気持ちにはなれない」と話す。
この山小屋は、噴火で被害を受けて休館となっていたが、2018年に高岡さんが引き継いだ。雨漏りを直したり、カビだらけの布団を片付けるなどして、なんとか営業にこぎつけた。 当時は、うまくいかず、「毎日のように泣いていた」という。
山小屋を再び営業してから7年がたった。布団を片付けた2階は、きれいな2段ベッドの部屋となった。ウリにしていたご飯もさらに力を入れ、特製の麺を使った「担々麺」の提供を始めたところ大人気となり、連日行列ができるほどだ。 二の池ヒュッテ 高岡ゆりさん: 「担々麺のおかげもあって、知名度もついたのかなと思って。お客さんは今年は多いですね。ありがたいです」
高岡さんにとって当時から変わらないのは、「火山であることを忘れないでほしい」という思いだ。