野木亜紀子の社会派エンタメの真骨頂! 沖縄の事件を通して日本の社会問題を描く『連続ドラマW フェンス』
野木亜紀子、松岡茉優、宮本エリアナが制作経緯や作品に込めた思いを明かす映像特典
主人公のキーこと小松綺絵は、目的のためには手段を選ばない非情さや行動力を持ち、器用そうに振る舞うが、心に闇を抱えた複雑な人物。そんな多面的な難役を、松岡は確かな演技力で、表情も声色も自在に変えつつ、見事に実在感をもって表現。松岡はちょうど沖縄に関心を持っていた時期に出演オファーを受けたことから縁を感じたそう。今の沖縄で実際に起きている問題をエンタメとして取り組む責任や覚悟をもって取り組んだようだ。さらに映像特典では、劇中の「沖縄の問題じゃありませんよ、日本の問題です」という台詞に共感し、「この物語で描いているのは、沖縄の問題ではなく、沖縄が背負っている問題。他人事ではなく、自分のこととして捉えるきっかけになれたら嬉しい」と、本作に込めた思いも語っている。 宮本エリアナが演じたもう一人の主人公・大嶺桜は、沖縄のコザ地区でカフェバーMOAIを経営しているブラックミックスの優しい女性。米兵による性的暴行事件の被害を訴えるが、何かを隠している不審な様子が窺えるも、嘘をつくような人物には見えない。この桜役にオーディションで選ばれた宮本は、初演技とは思えないほどナチュラルに演じている。ずっと沖縄で生きてきた桜は、英語もほとんど喋れない日本人だが、外見的には外国人のように見られがちで、同じ立場の者にしかわからない、疎外感や居場所のなさのようなものも感じて生きてきた。そんな複雑な思いを抱えながらも、素直に生きてきた桜という役には、長崎出身の宮本自身も共感できることが多かったようで、「日本人とは何か」を考えさせられるドラマであることや、ブラックミックスの役を演じられたことへの喜びを映像特典で語っている。 今回その一部を紹介した野木、松岡、宮本のコメントは、9月4日に発売されるDVD-BOXの映像特典(完成披露試写会舞台挨拶、松岡茉優/宮本エリアナ SPインタビューなど)でたっぷりと見ることができる。主人公の二人や多種多様な登場人物たち、それぞれの立場で異なる思いが描かれているため、どの視点で見るかによって受け取り方も変化してくる。二度見、三度見したくなる奥深い人間ドラマとなっているので、ぜひDVD-BOXで何度でも楽しんで欲しい。 文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社
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