なぜ稲盛和夫は「経営の神様」と呼ばれるようになったのか…稲盛氏が「名刺を忘れた秘書」にかけた意外なひと言
■“権力欲リーダー”は言行不一致を恥ずかしいと思わない なぜ、自分を律せないリーダーが増えるのか。 稲盛さんは、その原因の一つに美意識という視点もあると教えています。「『言っている』ことと『行い』が違えば、恥ずかしいという美意識が大事になってくる」というのです。そして、その美意識を高めるには「自分の仕事に対する誇りがなければならない」とも指摘しています。 人の上に立つリーダーに、「自分は部下から信頼され、尊敬される存在である」という誇りがあれば、「言っている」ことと「行い」が違えば恥ずかしいという美意識が生まれ、どうしても自分を律しようと努力するはずだと稲盛さんは言うのです。 一方、単なる権力欲でリーダーになっている人であれば、その地位を守ることが目的になっているので、「言っている」ことと「行い」が違っても恥ずかしいとは思わないと言うのです。 それでも当面はリーダーの地位は守れるかもしれませんが、そのような誠実さがないリーダーは信頼も尊敬されないので、いつかその地位から追われることになるのです。 仕事に美意識を持つことは、リーダーに限らず誰にでも同じように大切でしょう。 自分の仕事は「世の中に役に立っている」「自分は尊い仕事をしている」という誇りがあれば、誰からも文句を言われないような完璧な仕事をしたいという美意識が生まれ、そのために自分を律しようとする思いが強くなるはずです。 そのような人が、いつしか多くの人から信頼を得、また尊敬されるようになるのです。 ---------- 大田 嘉仁(おおた・よしひと) MTG相談役、元日本航空会長補佐 昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任。令和元年MTG取締役会長就任。現職は、MTG相談役、立命館大学評議員、鴻池運輸社外取締役、新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)、『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』(三笠書房)などがある。 ----------
MTG相談役、元日本航空会長補佐 大田 嘉仁