らしさが詰まった「5ドア」 ミニ・エースマン Eへ試乗 1クラス上のインテリア 強みが沢山
ベーシックなEでも充分以上の勢いで加速
公道へ出てみると、走りもしっかりミニ。ベーシックなエースマン Eでも、0-100km/h加速7.9秒と、充分以上の勢いで加速してくれる。市街地だけでなく、高速道路の合流などでも頼もしい。 エースマン SEは更に鋭いが、コーナリング中にパワーを加えると、ラインが乱れるトルクステアが生じる。路面が濡れていると、発進時にホイールスピンすることも。ちょっとヤンチャな感じだが、これを好ましいと感じる人もいるだろう。 回生ブレーキの効きは、アダプティブと、強・中・弱の3段階に調整できるが、タッチモニター上で切り替える必要がある。最も強力にしても、ブレーキペダルを踏まずに済む、ワンペダルドライブにはならない。 アダプティブ・モードは、やや制御に一貫性を感じにくかった。だが、全般的にスピードの調整はしやすいといえる。 操縦性は、スタイリングやインテリアに加えられる、もう1つの強み。ひと回り大きいカントリーマンと異なり、小柄なボディはキビキビと身をこなす印象と一致する。ロータリー交差点をクルリと回り、狭い車線でも導きやすい。 最も穏やかなドライブモード(エクスペリエンスモード)を選んでも、ステアリングはクイック。しかし緊張感を伴うわけではなく、運転が楽しい。ミニだけといえる、小気味いい体験を味わえる。
乗り心地は落ち着かない 欲しくなる強みは沢山
そのかわり、乗り心地は褒めにくい。アダプティブダンパーはオプションにもなく、路面次第では落ち着かない印象を拭えない。特に垂直方向の動きが目立っていた。僅かに増える車重の影響か、パワフルなSEの方が、Eよりしっとりしているようだった。 とはいえ、減衰特性は良くチューニングされ、強い衝撃が伝わることはない。長距離ドライブは、ライバルより疲れるかもしれないが。 小回りは、想像するほど利かない。最小回転直径は、11.1mとこのクラスでは大きめ。LBXやジープ・アベンジャーは、約10.5mとなっている。エースマン Eの航続距離は、肌寒い気温の中で走らせて210kmだった。 英国価格は、3万1800ポンド(約620万円)から。価格を踏まえると、急速充電や航続距離は、もう少し上の性能が欲しいところ。英国での保証は、距離無制限で3年間。購入を見送るほどのことではないとしても、これも他メーカーの方が充実している。 冷静に比較すれば、ライバルに届かない部分はあるものの、エースマンを選びたくなる気持ちは理解できる。何しろ、れっきとしたミニだからだ。インテリアやスタイリング、パーソナライゼーションの幅、キビキビとした楽しい走りなど、強みは沢山ある。 価格は少しお高めかもしれないが、そのぶんプレミアム。魅力的で面白い、小さな電気自動車だ。 ◯:運転が楽しい インテリアデザインと製造品質 ミニらしい個性 △:短めの航続距離 クロスオーバーとしては車内が狭め 少し癖のある運転体験
ミニ・エースマン E クラシック(英国仕様)のスペック
英国価格:3万1800ポンド(約620万円) 全長:4079mm 全幅:1754mm 全高:1514mm 最高速度:159km/h 0-100km/h加速:7.9秒 航続距離:299-308km 電費:6.9-7.0km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1720kg パワートレイン:ハイブリッド同期モーター 駆動用バッテリー:38.5kWh 急速充電能力:75kW 最高出力:183ps 最大トルク:29.5kg-m ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
ヴィッキー・パロット(執筆) マット・ソーンダース(執筆) 中嶋健治(翻訳)