【道は星に聞く!】GPSナビ誕生からポータブル隆盛までカーナビの歴史を振り返る
カロッツェリアAVIC-1(パイオニア・1990年)
1990年といえばバブル景気真っ盛りで、自動車界では初代NSXもデビュー。そんなイケイケムードの中、パイオニアが世界初の市販GPSカーナビとして開発したのが『カロッツェリアAVIC-1』だ。当時は“サテライトクルージングシステム”と呼ばれ、『道は星に聞く。』という印象的なキャッチコピーを記憶している人もいるだろう。 【写真】写真で見るなつかしのカーナビ (2枚) 当時はGPSと聞いてもほとんどの人が存在を知らず、一般向けにGPSを利用する機器もなかった。一部の高級車ではすでにカーナビが搭載されていたものの、内蔵センサーで自車位置を特定するため誤差が大きく、実用性は非常に低かった。ちなみに、同じ1990年に純正初となるGPSナビ(三菱電機製)が、マツダのユーノス・コスモに搭載されている。 AVIC-1のシステムは、今から考えると非常に大掛かりで複雑。モニターを搭載したビジュアルコントローラー、ディスプレイプロセッサー、GPSレシーバー、GPSアンテナなどが必要で、地図はCD-ROM(地域別に4枚)のデータを読み込むため、ドライブを持つCDメインユニットやCDチェンジャーも組み合わせなくてはならない。フルセットを揃えると、なんと50万円を超えたという。 機能的には、4段階のスケール切り替えができる地図に自車位置を表示するものの、スクロールや目的地検索、ルート探索、ルート案内などはできない。そしてGPS衛星の数が少ないため、利用できたのは1日にたった数時間。今から考えれば、有り得ないほど『使えなかった』わけだ。 とはいえ、このAVIC-1が世に出たからこそ、現在まで続くカーナビの世界が切り開かれたのは間違いない。まさに『パイオニア』精神に基づいた一台といえるだろう。
クラリオンNAC-200(クラリオン・1992年)
1990年に誕生したGPSカーナビは数年で急速に進化を遂げ、国内のメジャー電機メーカーが次々と参入。戦国時代へと突入していく。どのような業界でも、黎明期というのは可能性を探って個性あふれるモデルが生まれるものだが、クラリオンから1992年にリリースされた『NAC-200』は同社初のカーナビ(らしきもの)だった。 これは“マップナレーションシステム”と呼ばれ、ディスプレイを備えた本体と、デジタイザーというボード状の機器が組み合わされている。使い方は市販の紙地図をカットしてデジタイザーに張り付け、その上から走行予定ルート上の右左折する交差点をタッチペンで入力。すると、経路がICカードに記録されるのだ。クルマが走行すると案内ポイントで「次を左折です」など、音声によって方角を知らせる。 この方式では、ルートは自分で決める必要があり、案内中にルートを間違えた場合はクルマを一度止めて再入力しなくてはいけない。そしてGPSを使用せずセンサーで自車位置を検知する自律方式だったために、長距離になるほど誤差が増え、誤差を自動補正する機能も備えていなかった。 と、使い勝手は今ひとつではあるのだが、画面を見なくても音声で右左折の方向がわかるのは業界初の機能で画期的だった。ちなみにディスプレイでは、進む方向や案内地点までの距離も確認ができた。 残念ながら販売的にはうまくいかなかったが、クラリオンでは後継機において、このモデルで培った自律式測位にGPS測位を組み合わせて、高精度なハイブリッド測位を他社に先駆けて採用した。