森永卓郎氏が警鐘を鳴らす「世界恐慌の前触れ」 老後資金を失う人が続出する未来
半導体バブルの崩壊、そこから連鎖して起こる株価の暴落、円高の進行による日本の窮地。このままでは破産者や、老後資金を失う人が続出する......。森永卓郎氏がこのように予測する理由とは? 『THE21』2024年11月号で、詳しく話を聞いた。 【森永氏の解説】株式のバブルはこのように起きている ※本稿は、『THE21』2024年11月号特集「これから10年の生き方・働き方」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
日本では100年ごとに構造転換が起きている
私はまもなく100年に1度の構造転換が起こると予測しています。それがどれくらいのインパクトかを理解するために、日本で100年前に起こった変化を振り返ってみましょう。 当時は第一次世界大戦が終結して戦争特需が消え、スペイン風邪の流行も重なって日本経済が大不況に陥った時期。順風満帆な時は誰も現状を変えようとしませんが、追い詰められると人間も社会もガラリと変わります。この時に起こったのは和洋折衷というトレンド変化でした。 教科書には明治維新によって西洋化が進んだと書かれていますが、それはエリート層や富裕層に限った話で、庶民は大正時代になっても江戸時代の文化を引きずっていました。 そこへ、今度こそ本格的に西洋文化が流入し、人々の生活スタイルが一気に欧米化。それまで畳の上に正座し、筆で文字を書き、和服を着て徒歩で外出していた人たちが、洋服を着て椅子に座り、万年筆を使ったり、自転車に乗ったりするようになりました。 この大きな変化を巻き起こしたのが、現在「100年企業」と呼ばれる会社の登場です。万年筆のパイロットやトンボ鉛筆、クリーニングの白洋舎、自転車部品を製造するシマノ、国産椅子の生産を手がけるコトブキ、和菓子でも洋菓子でもないオリジナルの栄養菓子を生み出した江崎グリコなどが代表的です。
人類史上最大のバブルがまもなく崩壊する これが今からちょうど100年前のこと。そして当時と同様に社会を激変させる構造転換が間近に迫っています。 現在、この世界で起こっているのは人類史上最大のバブルであり、それは近々崩壊すると私は見ています。なぜなら、今まさに過去のバブルと同じことが繰り返されているからです。 世界初のバブルと言われるのは、1630年代のオランダで起こったチューリップ・バブルでした。チューリップの球根一つに、現在の価値に換算して数千万円の値がつくという、誰がどう考えても異常な状況でしたが、当時は誰もおかしいと思わなかった。 米国が震源地となった1920年代の世界恐慌の直前も、家電産業や自動車産業の株価が高騰しました。球根にしろ株式にしろ、あまりにも行きすぎた価格上昇が続けば、必ず大きな反動がくるということです。 翻って現在に目を向けると、10年ほど前からGAFAをはじめとするビッグ・テックの株価が高騰し、それが限界を迎えそうになると、今度は電気自動車や自動運転車がくるといって関連企業の株が上昇。そして自動運転には人工知能が必要だからとAIバブルが起き、現在はAIを動かすために必要だからと半導体バブルが起こっている。 誰もこの状況をおかしいと言いませんが、明らかに異常です。今やエヌビディアの時価総額は、日本のGDPに迫る規模まで高まっていますが、たかが一社の企業価値と一つの国家が生み出す価値が同じなんてあり得ないはずです。 半導体は、少しでも需給が緩むと価格が大暴落する特性を持っています。私が初めてパーソナルコンピュータを購入したのは50年前ですが、当時と比べて今の半導体価格は100万分の1ほどに下落しています。つまり、技術的なキャッチアップによって供給が増えれば、価格も簡単に下がる。どんなに長持ちしても、半導体関連の株価はあと数年でドカンと下がるでしょう。