アメリカ車全盛の時代を回顧する スズキのデザイン 水平対向エンジンはどうなる?【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
■自動ブレーキシステムについて
(ABSやエアバッグが標準装備になったように、昨今関心が高まりつつある自動ブレーキシステムも標準装備にすべきではないでしょうか、という意見に対して) 自動ブレーキシステムは高い技術力が必要な安全デバイスです。それを10万円以内という比較的求めやすい価格で提供するところが増えてきました。 ドライバーの命を助けるということはもちろんですが、例えば障害物に当たった自損事故で修理する場合でも、バンパー交換だとして、10万円以上かかる可能性が大いにあります。 そういった損得勘定をしてみれば、スバルのクルマでアイサイトの装着率が高いことも納得できます。 ただし、全車標準装備にするというのはどうでしょう?日本のメーカーはどこもコストでものすごい競争をしています。多くの車両で使われる部品ひとつの仕入れ値が10円下がれば、1年間に100万台作ったとして1000万円の違いが出てしまいます。自動車の部品点数はいったいいくつあるのでしょう? 100点の部品が10円ずつ下がれば、10億円のコストダウンです。ある意味コストダウンでもうけが出るのです。 安全デバイスが標準装備となることで、当然、コストは上がります。メーカーにしてみれば、高級車ならいいけれど、大衆車や軽自動車では、販売価格に跳ね返り、競争をさらに激化させます。あくまでオプションでという考え方になるのも自然です。 安全デバイスは高度な技術ですから、コストが劇的に下がるというようになるには、もう少しかかるでしょう。またどんどん進化しているデバイスなのであっという間に古くなってしまうことも考えなければなりません。 標準装備がいいとわかっていてもメーカーが踏み切れない事情はまだまだ多いのです。
■水平対向エンジンの未来は?
(「これからの水平対向エンジンは、直列やV型に対して競争力を持ち続けるとお考えでしょうか?技術革新が起こる可能性があるとお考えでしょうか?」との質問に) 水平対向4気筒エンジンはフラットフォーといいますが、古くはVWビートルが有名でした。日本ではスバルも有名ですね。フラットフォーの特徴はコンパクトで低重心。振動のバランスが取れるなどのメリットがあります。デメリットはクランクシャフトの構造が複雑で製造に手間とコストがかかるということがあります。 水冷エンジンが主流になるまでは、シリンダーバンクが広く、空冷式のレイアウトに向いていたためVWが採用していました。スバルがこの方式を取り入れるのは1966年発売のスバル1000からで現在まで製造し続けています。 コストが重視される現在は少数派というわけです。コストの問題からストレート6がほぼ消えましたが、フラットフォーはスポーツエンジンという点に活路を見いだしています。86/BRZが誕生したことはとてもよかったと思います。 この方向が進化すれば、水平対向の未来も明るいといえるかもしれません。スポーティな走りにはコストがかかることはスポーツカーの歴史が物語っています。 もう一点XVハイブリッドのようにフラットフォーとハイブリッドの組み合わせも燃費のことを考えればおもしろいかもしれません。フラットフォーのようなユニークなエンジンには発展してほしいですね。