デルタ電子の「超現実的」なAI戦略、非IT分野も「AI×○○」でこう変わる
6月初旬、台北市でアジア最大のIT見本市「COMPUTEX TAIPEI」が開催された。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOの講演や、マイクロソフトのAI PC「Copilot+PC」に注目が集まる中、電子機器製造の台湾電子工業(デルタ電子)は「非IT領域におけるAI導入」をテーマに基調講演を行った。現地で取材した筆者が、デルタ電子が注力する「実業」の面でのAI活用法をレポートする。 【詳細な図や写真】ツィッカー・チウエ氏(出典:デルタ電子の公式LinkedInから引用)
“次々世代”見据えるデルタが注力する「4分野」
デルタ電子は1971年に設立され、電力や温度管理などエネルギーインフラやその関連のソリューションを提供する企業だ。台湾に本社を持ち、毎年利益の8%をR&D(研究開発)に投入しており、R&D施設は中国、欧州、日本、シンガポール、タイ、米国に存在する。 「COMPUTEX TAIPEI 2024」で基調演説を行ったのは、2013年に設立されたデルタリサーチセンター(DRC)のツィッカー・チウエ(Tzi-cker Chiueh)氏で、「AIがいかにオートメーションアプリケーションに革命をもたらしたか」がテーマとなった。 DRCは2022年に「DRC 2.0」を宣言し、次々世代、さらにはまったく新しい製品ラインを生み出すことを目的としている。ミッションとして掲げているのは以下の4点だ。 1. スマートマニュファクチャリング 予知保全、バーチャルフィジカルインテグレーション、シミュレーションモデリングなどの技術を用い、製造工程の効率化とボトルネックとなる問題点の割り出しを行い、コストとリスクを下げる。 2. AI データ分析、映像解析技術、セマンティック分析(ユーザーの意図をくみ取った分析)などの技術を集約することにより、自動運転、スマートエネルギーマネジメント、オートメーション技術を開発し、効率化とサービスの質の向上を目指す。 3. インフォメーション、コミュニケーションテクノロジー サイバーセキュリティ、ワイヤレスコミュニケーション、ARアプリケーションなどを用いて革新的な産業サービスを提供する。 4. ライフサイエンス プレシジョンメディシン(精密医療)、光機械一体型技術に焦点を当て、特に核酸検出製品に注力しつつ、ライフサイエンスの発展に貢献する。