デルタ電子の「超現実的」なAI戦略、非IT分野も「AI×○○」でこう変わる
データセンター乱立で「電力配分」崩壊? デルタ流「解決策」
これを踏まえ、チウエ氏はまず、AI半導体の世界的な増加、それに伴う電力需要の増加などを説明。「2026年にはその市場規模は182億ドルに成長する」という予測を掲げた。しかし、それに伴う電力需要、特にデータセンターの冷却にかかる電力の増加が今後の世界の電力配分を脅かす存在になることも強調した。 こうした事態に対応するためにデルタが開発するのが、新世代のデータセンターパワーアーキテクチャーだ。 特に、クーラント・ディストリビューション・ユニット(CDU:Coolant Distribution Unit)と呼ばれる装置は、高効率ポンプなどの導入により従来製品と比較して冷却効率を30%上昇させ、熱交換によるエネルギーロスも30%削減することが可能だという。
「AI×Wi-Fiセンシング技術」で何ができる?
さらにユニークな発想として、「Wi-Fiをセンサーとして利用する」というアイデアも提示された。 これはアンテナとAIを組み合わせることにより、ToF(Time of Flight:電波が対象物に当たり、反射して戻ってくるまでの時間を測定し、その時間を基に対象物までの距離を計算する技術)とAoA(Angle of Arrival:信号が受信される方向を特定する技術)による正確なポジショニングを行うというものだ。 この技術により、RSSI(受信信号強度)ベースのポジショニングの位置情報の精度が2~3メートルの誤差であるのに対し、0.35メートルにまで縮小できるという。 デルタでは独自の試験として、ベッドの上で眠る人の呼吸と心拍の計測実験を行った。寝ている人があおむけ、横向き、うつぶせなど、さまざまなポジションでテストを行ったが、その誤差は非常に少なく、Wi-Fiの利用で離れた場所にいる人の呼吸と心拍数をかなり正確に計測することが可能だったという。 Wi-Fiセンサーの実用的なアプリケーションとしては、まず個人のスマホの位置特定が比較的簡易に行えるため、製品のオプションとして組み込まれる可能性がある。 次に、人の呼吸、心拍数などが正確に計測できるため、睡眠の質のモニタリング、高齢者施設などでの見守りなどに適用できる。 また、家庭でのWi-Fi機器を活用した侵入者検知、車内での幼児やペットの置き去り検知なども可能となる。ちなみに欧州では車内での幼児やペットの置き去りを禁止する法令が施行されており、いかにこれを防ぐかの技術が必要とされている。