トゥーロン挑む“不運の天才”小川航基が描く東京五輪、W杯への反骨人生
探し求める答えがトゥーロンの地でわかるかもしれない。同世代のイングランド、チリ、ポルトガルと対峙するグループリーグ。そして、その先に待つ準決勝以降の戦いや、あるいは順位決定戦で結果を残すことが、巻き返しへのきっかけになると小川は信じている。 身長186cm、体重78kgの恵まれたボディに強さと高さ、さまざまな得点パターンを生み出す上手さを宿す。昨年11月のUAE遠征では3試合で3ゴールをマークしたが、U-23クウェート代表との第2戦でハットトリックを達成するなど、計4ゴールをあげた上田との差を逆転できなかった。 「クラブではもがきながらプレーしている印象ですけど、今日の練習を見た感じでは元気にやってくれていた。彼のよさを最大限出してほしい、と思っています」 トゥーロン国際で監督代行として指揮を執る、森保監督から厚い信頼を寄せられる横内昭展ヘッドコーチ(51)は小川へエールを送りながら、東京五輪世代の二番手以降の選手たちで臨む大会そのものの価値をこう語った。 「彼らのなかにも東京五輪世代の選手として、もっと言えばA代表の方にも入ってこられる選手もいると思う。いまはそうではないとしても、足がかりにしてくれれば一番いい」 小川自身も以前は東京五輪を強く意識し、J1でレギュラーとして活躍しなければ始まらないと強調していた。いまでは、さらに先にあるサッカー界最大の舞台へ視線は向けられている。 「五輪はすごく大きな大会で、誰もが注目し、目指す舞台だし、もちろん僕自身も目指している。それでも、五輪だけを見過ぎず、もっと先も見ることが大事。先にあるカタールを考え、その手前に東京五輪がついてくる、というイメージでいかないと、むしろ先は見えてこないと思っている」 25歳で迎える2022年のワールドカップ・カタール大会で暴れる自分自身を思い描き、成長していく過程で東京五輪に臨む。どん底を味わわされた未完の大器は逆襲へのシナリオを描き直しながら、日付が29日へ変わった直後に、フランスへの経由地ドバイへ向かう航空機へ乗り込んだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)