トゥーロン挑む“不運の天才”小川航基が描く東京五輪、W杯への反骨人生
復活を期した2018シーズンも、左ひざの状態がなかなか上向かない。真価を問われるプロ3年目。結果を残さなければいけないと頭では理解していても、体がついてこない。夏場には練習中に右肩を脱臼。全治6週間と診断されて再び戦線離脱を強いられた。 ともにU-20ワールドカップを戦ったMF堂安律がFCフローニンゲンへ、DF冨安健洋がシントトロイデンVVへ移籍。森保一監督が五輪代表と兼任したフル代表にも飛び級で抜擢され、活躍する姿と見比べるたびに自らへの不甲斐なさとジレンマを募らせてきた。 「まさにいま、U-20ワールドカップが開催されていますけど、すごく懐かしいというか、何かを思い出すところもありますけど……でも、けががあったとはいえ、現状にはまったく満足できないし、自分が思い描いていた状態じゃない、というところがあるので」 ようやく上向いてきたのは昨シーズンの終盤。11月3日のサンフレッチェ広島戦で、志願したPKを沈めてJ1初ゴールと逆転勝利をゲット。12月8日の東京ヴェルディとのJ1参入プレーオフ決定戦では先発を託され、前半41分に自ら獲得したPKを決めてチームをJ1残留へ導いた。 しかし、いい流れを今シーズンに継続できない。リーグ戦ではすべて途中出場で5試合、わずか53分間のプレーにとどまっている。チャンスをもらっているYBCルヴァンカップのグループリーグでも5試合、352分間プレーしながら、FWのバロメーターとなるゴールを奪っていない。 「リーグ戦で出場機会を得られていない、というのは間違いなく自分の責任。理由はただひとつで、監督にアピールできていないからです」 天国か地獄か、生きるか死ぬかの大一番だったヴェルディ戦のように、名波浩監督(46)に自らを起用させたい、と思わせることができない自分がもどかしい。かつて思い描いていた理想と、目の前の現実との間にギャップが生じた理由を、小川は自らの「甘さ」に帰結させている。 「自分のなかでは一日一日を大切にして、成長できるようにやってきた自負がある。だけど、それだけでは成長していないというところで、まだ自分が気づいていない何かがあるかもしれない。そこに早く気づいて、こうすれば成長できるという自分なりのものを、早く見つけたい」