トゥーロン挑む“不運の天才”小川航基が描く東京五輪、W杯への反骨人生
闘志と悔しさを胸中に同居させながら、ジュビロ磐田のFW小川航基(21)はモードをJリーグから、6月1日からフランスで開催されるトゥーロン国際大会に臨むU-22日本代表に切り替えた。 ヨーロッパ組のGK山口瑠伊(エストレマドゥーラUD)、MF伊藤達哉(ハンブルガーSV)を除く20人が、28日に千葉県内に集合。悪天候に見舞われながら、約1時間半にわたって初練習が行われたピッチに、ともに切磋琢磨してきた同世代の仲間たちの姿は見当たらなかった。 「トゥーロン国際の代表に選ばれたことはもちろん嬉しいし、置かれた環境のなかでベストを尽くすのがプロ。やってやる、という気持ちも強いですけど……」 U-21代表として臨んだ、昨年11月のUAE(アラブ首長国連邦)遠征以来となるナショナルチーム入りに自然と闘志が高まる。 ならば、小川が募らせる悔しさの源泉は何なのか。答えは6月14日からブラジルで開催される、コパ・アメリカに臨むフル代表の顔ぶれにある。 「……ただ、コパ・アメリカの代表に東京五輪世代の、いつも一緒にプレーしてきた選手たちが選ばれて、やっぱりものすごく悔しい。トゥーロンではその悔しさを、反骨心に変えてプレーしたい」 日本サッカー協会から24日に発表された、コパ・アメリカの代表メンバー23人のなかで、東京五輪世代は実に18人を数えた。国際Aマッチウィーク以外の開催で選手招集が難航した結果、来夏に迫った自国開催のヒノキ舞台へ向けた強化に舵が切られたからだ。 平均年齢が22.13歳と一気に若返った顔ぶれのなかに、しかし、神奈川・桐光学園高時代から東京五輪の主役候補と期待されてきた自分の名前がない。FW陣の主軸は2021年からの鹿島アントラーズ加入が内定している、ひとつ年下の上田綺世(法政大学3年)にいつしか奪われた。 順風満帆だったサッカー人生が暗転したのは、約2年前の2017年5月24日だった。韓国で開催されていたFIFA・U-20ワールドカップに、代役の利かない絶対的なエースとして臨んだ小川は、U-20ウルグアイ代表とのグループリーグ第2戦の前半16分に左ひざに激痛を覚える。 15歳で抜擢されていたFW久保建英(当時FC東京U-18)との交代を余儀なくされ、急きょ向かった水原市内の病院で告げられたのは、左ひざの前十字じん帯断裂および半月板損傷。チームの決勝トーナメント進出を見届けてから帰国し、手術を受けた。全治6ヵ月で残るシーズンを棒に振った。