震撼“無差別殺傷事件”相次ぐ中国社会の現実 犯罪リスク「管理」も…【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN
中国・広東省では、“生活に不満”“投資に失敗”など8つのタイプに当てはまる住民を地元政府が探し出し、事件を起こす前に管理しようという動きが出ています。引き金となったのは、中国で多発する無差別殺傷事件。取材すると、中国社会の現実が見えてきました。【バンキシャ!】 ◇◇◇ 21日、バンキシャ!は“無差別殺傷事件”の現場へ(中国・広東省 珠海市)。見えてきたのは…。 渡辺 容代 記者(NNN珠海) 「まだ閉鎖されていますね。事件前は市民の方でにぎわっていたということですが、まったくひとけがないです」 このスポーツ施設では、2週間前(11日)。 中国SNSより 「やばい!人をひき殺してる」 1台の車が暴走。ジョギングをしていた市民などを次々とはね、35人が亡くなった。事件は、街の様子を一変させた。23日、近くの公園の周りを車で走ると…。 バンキシャ 「すべての入り口に警備員がいます。さすまたと、防弾チョッキ着てるのかな。厳重な警戒態勢ですね」 事件後に増やされたという警備員が、至るところで目を光らせる。さらに…。 バンキシャ 「まさに今ですね、事件を受けて車止めが設置されている状況です」 “暴走車”から市民を守るための対策がとられていた。いま中国で相次いでいる“無差別殺傷事件”。9月には広東省深圳で日本人の10歳の男子児童が刃物を持った男に襲われ、死亡する事件が発生。 また、19日には湖南省にある小学校の前で車が暴走し、10人以上がケガをした。これはSNSに投稿された、事件の瞬間を捉えたとみられる新たな映像だ。朝の通学時間帯。画面右にある校舎を目指し、子どもたちが集まってくる。 すると、1台の車が猛スピードで突っ込んできた。スピードを緩める様子はまったく見られない。そのまま児童らを次々はねると、校舎の方へ。その後、向きを変え再び歩行者に突っ込んだ。運転していたのは39歳の男。死者は出なかったが、社会に衝撃を与えた。 珠海市民 「人が多くいる場所に行くとドキドキしてしまいます。また同じようなことが起きるんじゃないかって」 日本人も10万人以上が暮らす中国。これほど“無差別殺傷事件”が相次ぐ背景には、いったい何があるのか。これは11月13日、山東省の警察がSNSに投稿した動画だ。タイトルは「車が子どもに突っ込んできたら?」 山東省・棗荘市警察のSNSより 「私がどう動くか見ていて。タイミングを見計らって車の後ろ側に素早く逃げる!」 「さあ私が合図したらすぐに走って逃げるんだ。合図をよく聞いて…逃げて!」 有効かはわからないが、“暴走車”から身を守る方法をレクチャーしていた。また、深圳市の公安局がSNSに日投稿したのは、こんな護身術。 「突っ込んでくる車に持っている物を投げて、視界をふさぎましょう。たとえば衣服、卵、小麦粉」 この投稿はこれまでに10万回以上、読まれているという。 ◇ 中国に暗い影を落としている一連の“無差別殺傷事件”。なぜ今、中国で事件が次々と起きているのか? 中国情勢に詳しい 神田外語大学 興梠 一郎 教授 「SNSの影響はやっぱり大きいと思います」 「たとえば自動車を使って殺傷したということになると、『自分も不満だ』と。『じゃあ自分もやろうか』とか。伝播力、拡散力がものすごく高まっている」 習近平国家主席は“異例の対応”に乗り出した。地方政府に対して治安対策を徹底するよう、指示を出したのだ。これに、広東省の政府がいち早く応えた。住民の中から「職を失った人」や「男女関係で失意に陥った人」など、「8つのタイプ」に当てはまる人を探しだし、管理を強化することを打ち出したという。不満を抱える人を監視することで、犯罪の芽を摘もうというこの対策。8つのタイプの人をどうやって探しているのか。 バンキシャ!は、広東省で市民を取材。 バンキシャ 「事件の再発防止のため、失業した人や夫婦関係が悪い人を探す取り組みを知っていますか?」 市民 「そういったことは行われていますよ」 バンキシャ 「家を1軒1軒訪ねるんですか?」 市民 「居民委員会がやっているので詳しくはわかりません」 そこで、居民委員会の事務所へ。居民委員会とは、党や政府の指導のもと市民を管理する地域住民の組織だ。 バンキシャ 「ここでは犯罪リスクがある人を探す取り組みを行っていますか?」 居民委員会 職員 「何かありましたか?」 バンキシャ 「確認したくて」 居民委員会職員 「していますよ」 バンキシャ 「リスクのある人を調べているのは事件が起きたからですか?」 居民委員会職員 「普段からしています。最近、さらに強化しているんです」 事件のあと、実際に自宅に居民委員会の職員が調査に来たという人も。 珠海市民 「困っていることはないか、政府の助けが必要か聞かれました。経済状況が良くない人を訪ねているんでしょう」 “国民の統制”とも言える、新たな治安対策。こうした“抑圧的な政策”こそが、人々の不満を募らせ、事件へと向かわせていると専門家は指摘する。 神田外語大学 興梠 一郎 教授 「実は(ゼロコロナ政策の)ロックダウンがかなり影響していて。ロックダウンというのは事実上の監禁ですから、経験した人しか分からないくらい非常にメンタルのダメージをみんな受けていて」 「もう一つは経済ですよね。ロックダウンしたことで商売できなくなったと。ロックダウンが終わった後、景気よくなるかと思ったら、一向によくならないのでさらに不満がたまっている。非常に悲観的になっている。こういう状況だと思います」 中国経済の実態とは――。 ◇ 22日、夜明け前の北京市内を走ると…。 長谷川 裕 記者(NNN北京) 「すごい数です。交差点はみ出していますね」 集まっていたのは、その日の仕事を探す労働者たちだ。日給が書かれた2次元コードを読み込んで、仕事に応募する。 この人も仕事を探しているというが… 仕事を探す市民 「3日連続で仕事が見つかりません。私には妻と2人の子どもがいます。子どもは学校に通っていて1年に1万元(約21万円)以上かかるんです。稼がないといけないのに…」 学費はおろか、日々の食事もままならないという。 仕事を探す市民 「よくない考えだけど、これ以上追い込まれたら、物を奪うしかありません」 「向こうには携帯電話の番号を売ったり、血液を売ったりする人までいます。携帯の番号は400元(約8500円)、血液は800元(約1万7000円)になります。それでも何日暮らせるか」 若者の就職難も深刻化している。大学を卒業したばかりだという21歳。 大学を卒業したばかり フリーター(21) 「簡単には就職できませんでした。今は求められる学歴がとても高いんです」 大学ではコンピューターサイエンスを学んだが、就職先は見つからず、フードデリバリーのアルバイトで生活費を稼ぐ日々だという。 フリーター(21) 「将来に不安はあります。この先どうすればいいんだろうって」 バンキシャ 「悩みを人に相談することは?」 フリーター(21) 「ありません。この仕事はスマホと向き合うだけなので、自分でストレス解消するしかないんです」 *11月24日放送「真相報道バンキシャ」