テレビの「32型」がどこのサイズを表しているのか、知っていますか?横の長さではありません
「32インチ」はどこの長さ?
さて、ここまでで「インチ」という単位については分かりました。では、この「32インチ」はどこの長さなのか。約80cmということは「横の長さ」か?と思う人も多いかもしれませんが、実際に測ってみると少しだけ80cmに届かないことが分かります。 実はこの長さ、テレビの「対角線」の長さなのです。「32型」であれば、テレビの左上の角から右下の角(右上の角から左下の角でも良い)までを結んだ長さが32インチであることを示しているのです。 なぜ縦の長さでも横の長さでもなく、対角線の長さを表記しているのか。そこには、テレビの長い長い歴史が関わっているのです。
テレビの歴史
20世紀の大発明の一つとされ、「三種の神器」「3C」の一つとして大人気の家電製品となった「テレビ」は、もともとブラウン管という装置で放送を行っていました。アナログ放送終了直前期のブラウン管は見たことがある人も多いと思いますが、もっと昔、1930年ごろに初めて成形されたブラウン管は完全に円の形をしていたのです。 そのため、テレビの大きさを表す方法としてその円の「直径」を用いていました。それが徐々に楕円形となり、画面が大きくなり、長方形の形になりましたが、円形の時代の名残から今でも対角線の長さで大きさを表すようにしているのです。 技術の進歩により、綺麗な長方形で液晶に映像を映し出すことが可能になった現代のテレビジョン。しかし、対角線の長さだけでは縦と横の長さが分からないのではないか、と思う人もいるでしょう。実はここに、中学校で習う数学の知識が活かされているのです。
テレビの大きさと「ピタゴラスの定理」
皆さんは、「ピタゴラスの定理」もしくは「三平方の定理」という数学の公式を知っていますか?中学校で学習する有名な公式なので、聞いたことある、という人が多いでしょう。 ピタゴラスの定理とは、三角形の辺の長さに関する公式で、直角をつくる2つの辺の長さをそれぞれ2乗して足し合わせたものが、斜辺の2乗と一致する、という関係式になっています。この「ピタゴラスの定理」については、以前の記事で詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。 記事リンク:https://gendai.media/articles/-/138114 さて、今回はこの直角三角形を2つ組み合わせて、テレビの形のような長方形を作ってみましょう。 このように、同じ形の直角三角形を回転させて2つくっつけると、長方形が完成します。つまり、テレビの対角線の長さは、テレビの縦の長さと横の長さを用いてピタゴラスの定理の式で表すことができるのです。 さて、皆さんは近年のテレビの縦横比はどのくらいだと思いますか?色んなメーカーが家庭用テレビを販売していますが、その縦横比は基本的に一律で定まっているのです。現在では、「横:縦=16:9」のテレビが主流になっています。 かつてテレビは「横:縦=4:3」で、そこまで横長な形ではありませんでした。それが、映画の縦横比が変わったことや、地上デジタル放送に移行したことなどが理由で、順次「16:9」へと変わっていきました。そのため、今のテレビで昔の映像やCMなどを見ると横が余って黒い画面になるのですね。