シリーズの勝敗を分けた捕手陣、頭脳戦の差
プロ野球最大のイベントが終わった。ソフトバンクが4勝1敗でヤクルトを破り、本拠地、ヤフオクドームに戻ることなく、2年連続7度目の日本一に輝いた。真中監督が「本当に圧倒された」と総括したように投打に両軍に大きな力の差を感じさせたが、特に打線の明暗が際立った。 ソフトバンクは、1番の福田の出塁率が.533、2番の明石が.609と、1、2番が高い出塁率を誇り、MVPのイ・デホがホームラン2本、8打点。下位打線もチャンスを作り、打率.158、2打点に終わったトリプルスリー、柳田の不振が影に隠れた。シリーズのチーム打率は、実に.283だ。 一方のヤクルトは、1番の上田が打率.176、出塁率.263、セ・リーグ首位打者の川端も、打率.167、出塁率.286と、1、2番が機能せず、第3戦でシリーズ史に残る脅威の3連発を放った山田も、第4、5戦は、ノーヒット。打率.176のバレンティン、打率.150の雄平の不振など、自慢の打線は、シリーズ打率が.182と、沈黙したままシリーズを終えた。 短期決戦ゆえの怖さではあるが、なぜ、ここまで明暗を分けたのだろうか。 元千葉ロッテで評論家の里崎智也氏は、ここまで如実に両チームに差が生まれた背景には、両捕手陣のリードの違いにあると指摘する。 「セ、パの野球観の違いなのかもしれないが、両チームのキャッチャーのリードに差がハッキリと出た。ソフトバンクは、ストライクを使う力勝負のリード。ファウルでカウントを稼ぎ、どんどんストライクをとっていき、追い込んでからボール球を使う。山田もストライクを先行され頭の中が整理できないまま配球で裏をかかれ迷いだした。 一方、ヤクルトは、ボール球を使うリード。ボールで誘って、誘って、『どうぞボール球を振って下さい』というパターン。初球もボールから入り、カウント2-0からでも平気でフォークを使う。だが、外のボール球から入って、相手の狙いの何を察知できるのか。第2戦の館山にしても、ボール、ボールと、誘いすぎて、カウントを悪くして四球につながり失点した。 確かにヤクルトは、石川、館山と変化球投手が多く、ソフトバンクは、バンデンハークのように、ぐいぐいとストライクで押しても打ち損じさせることのできる力のあるピッチャーが目立ったが、そもそもリードの考え方の違いであって、そこは関係ないと思う」