九州大病院が膵臓移植100件達成、待機期間も短く 患者「元気な体手に入れた」
九州大病院は9月、院内で実施した膵臓(すいぞう)移植手術が100件に達したと発表した。親やきょうだい、親類が膵臓の一部を提供する「生体移植」と、脳死や心停止の状態になった人からの「脳死移植」「心停止移植」を合わせた数で、全国で2番目に多い。肝臓の生体移植も千件を超えており、中村雅史病院長は「日本の臓器移植を支えている施設だと自負している」と胸を張る。 【写真】九州大病院の外観 膵臓移植は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが分泌されない「1型糖尿病」の根治治療法として行われる。九大病院は2001年に初めて実施。九州・山口地区から患者を受け入れ、今年9月1日に脳死移植93件、生体移植4件、心停止移植3件の計100件となった。全国でこれまでに行われた膵臓移植の17%を占め、藤田医科大病院(愛知)に次ぐ多さだ。 中学時代から1型糖尿病に悩まされてきた愛媛県松山市の西岡亜弥さん(51)は、合併症の腎疾患が重症化した30代半ばから九大病院に通院。40歳となった13年に姉の提供で腎臓の生体移植を受け、2年後には膵臓の脳死移植もした。食事管理や1日3回のインスリン注射などの血糖コントロールに追われる日々から解放され、「移植のおかげで元気な体を手に入れた」と喜ぶ。 膵臓移植を望む患者が、日本臓器移植ネットワークに登録してから手術を受けるまでの待機期間は全国平均で約3年4カ月。これに対し、九大病院は約2年4カ月で1年短い。加来啓三助教は「各診療科・部門の連携により手術室が空いていないとか、スタッフの手が足りないといった理由で移植を断ることはほぼない」「同時移植が多い膵臓と腎臓双方の手術に精通した医師が複数いるので、難度の高い手術も担える」と説明する。 重度の肝不全に陥った患者の肝臓生体移植も7月に千件に達し、京都大病院に次いで2番目に多い。 現在、欧米では「健康な人の体を傷つける行為」との理由で生体移植はほとんど行われてない。ただ臓器提供の認知が広がっていない日本では、脳死移植はまだまだ少ないのが現状だ。 吉住朋晴教授は「臓器提供に無関心な人を一人でもなくすことを目標に啓発活動をしていきたい」と語った。(編集委員・鶴加寿子)