明治安田が取り組むUX改革とデザイン内製化。担当者がありのままに語るその苦労や、工夫とは?
デザインシステムを作り、誰でもデザインしやすい環境を整備
では、明治安田はデザインでどういった点を重視しているのだろうか。松浦氏は以下の3つを挙げた。この考え方をデザインに落とし込み、取り組んできた結果、明治安田はUCDAアワード2023で「情報のわかりやすさ賞」を受賞している。 ・情報の一覧性 ・コントラストの確保 ・無駄のないページ遷移 3つの考え方を紹介したが、とはいえ、実際はうまくいくことばかりではない。明治安田ではそれに加えて、デザイナーの行動指針やマインドセット醸成のための考え方を12のアクションにまとめている。具体的には、「わたしたちはOne Team!」、「スピードは価値!」、「オーナーシップを持とう!」、「会社都合をお客さまに押し付けない」などだ。
デザイナーの採用が進まない中、1,000拠点ある営業所の事務職員に求める人材が!
デザイナーの採用は簡単には進まないという。その理由として、松浦氏は以下を挙げた。 ■ デザイナー人材の供給の少なさ ・デジタルサービスに関わるデザイナーの需要の多さの割に供給が少ない ・即戦力デザイナーはどの会社でも奪い合い ■ 明治安田特有の事情 ・現在デザイナーはフルリモート勤務が当たり前になっているが、明治安田はフルリモートまで実現できていない ・金融機関ゆえにセキュリティが厳しく、デザインに用いるパソコンを自由にインターネットにつなげられないといった制約がある ・伝統ある企業なので、昔からの考えの人が多いのではといったイメージがある 人材不足を解消する打ち手がなかなか見つからない中、意外なところで人材が見つかったという。明治安田には営業所が1,000拠点あることは前述したが、1拠点あたり事務職員が大体2、3人いる。 事務職員の中に、実は美大出身だったり、働きながらデザイン専門学校に通っていたりという人がいたのだ。彼・彼女らは企業フィロソフィーや営業職員の思考・行動を理解しているため、教育コストがほぼかからない。これを受け、事務職だった方がデザイナーとして働けるよう、いろいろな仕組みを整えているという。 たとえば、業務委託デザイナーによるOJTを受けたり、会社負担でデザイン専門学校に通ったりする機会を設けた。また、事務職からデザイナーへ職種変更ができるように社内登用制度や、人事制度の整備も行っている。松浦氏が一番重要視しているのが心理的安全性、疑問に思うことや提案を言いやすい環境を作っていくことだという。こうして環境や制度を整備することによって、内製化は徐々に進んでいるという。