明治安田が取り組むUX改革とデザイン内製化。担当者がありのままに語るその苦労や、工夫とは?
明治安田がデザインに注力する2つの理由
続いて、松浦氏は明治安田のUX改革について話を進めた。明治安田生命は20年前に明治生命と安田生命が合併して誕生した会社で、約140年の長い歴史と伝統をもつ生命保険会社だ。2024年現在、全国に営業拠点が約1,000拠点あり、営業職員が3.6万人いる。彼らは保険の営業に加えて、お客さまに何かあったときに保険金請求手続きのサポートも行っている。 ┌────────── 万が一の事態では、人間は気が動転したり、災害でインターネットが使えなくなったりする可能性があります。保険においては、人によるサポートは欠かせません(松浦氏) └────────── こうした背景から、明治安田ではすべてをデジタル化せず、人とデジタルを融合する形をとっている。では、明治安田はなぜデザインに注力してきたのか。松浦氏はその理由として次の2つを挙げた。 ・顧客の求める価値(保険商品~サービス~体験価値)の変化への対応 今までは保険というサービスを提供していれば、お客さまはある程度、満足していただけた。しかし、時代の変化に伴い、保険金請求のしやすさや、支払いのスムーズさなど、保険提供前後の一連の体験に対するお客さまの関心が高まってきた。それに応じて、顧客ニーズに対応する必要性が増している。 ・感染症流行下での対面営業の制限によるデジタル接点改善の必要性 これまでは対面営業をメインに行ってきたが、感染症の流行で対面営業が制限され、どうしてもWebなど、デジタル接点を改善せざるを得なくなった。今までは手続き方法などがわかりづらくても、営業職員がサポートをしていたが、そうした人手に頼るところを最適化しようと改善が進められているという。
2022年にデザイン組織を立ち上げ、内製化を推進。内製化を進める理由とは?
明治安田は、2022年にデザイン組織を作った。当初は外部委託からスタートし、今も外部委託に頼っている部分はあるが、徐々に内製化を進めているという。職種ごとの人数構成のうちエンジニアやデザインプログラムマネージャーは自社スタッフで内製化が完了しているが、デザイナーは3倍規模に拡大させる必要がある。 内製化が必要な理由としては、デザイナーが単にデザインを作るだけでなく、ブランドイメージとデザインを一致させることが求められるからだ。外部委託では外部デザイナーの意図がデザインに反映され、企業のフィロソフィーと一致しない場合があるため、内製化を進めている。 また、営業職員3.6万人の思考や行動を理解しなければシステムが使いにくくなる。外部委託では担当者が変更されるリスクもあり、そのたびに企業のフィロソフィーを理解してもらう学習コストが発生するため、デザインの内製化が必要だと考えた。