明治安田が取り組むUX改革とデザイン内製化。担当者がありのままに語るその苦労や、工夫とは?
UXとは? UXの期間モデルと5段階モデルを紹介
続いて、松浦氏はUX(User Experience)について解説をしていった。UXもISOで定義されており、「製品、システム、サービスを使用した、及び/または、使用を予期したことに起因する人の知覚や反応」とされている。少しわかりにくい表現だが、松浦氏は「使用した」「使用を予期した」という部分がポイントだという。 ■ UXの期間モデル。UXは利用中だけでなく、体験を想像・期待している期間や振り返る期間も含まれる
松浦氏は以下のUXの期間モデルの図を示した。UXと聞くと、利用中の体験を思い浮かべがちだが、実際はそれだけではなく、予期的UX――すなわち、体験を想像し、期待している期間もUXに含まれる。
┌────────── たとえば、ラーメンを食べておいしいな、と思うのは利用中の体験です。また、ラーメンが食べたいな、と思い返すことがありますよね。そういうとき、みなさんは累積した体験をもとに予期、想像しています。体験は利用中だけでなく、体験を想像・期待しているときも体験の一部に含まれます。また、体験を全体的に振り返ることもUXに含まれます(松浦氏) └────────── ■ UXの5段階モデル。UIはUXの一部であり、UI=UXではない
続いて、松浦氏はUXの5段階モデルとして以下の図を紹介した。UXの期間モデルと比較すると概念的なものになる。
ポイントは、UIはUXの構成要素のひとつであるという点だ。UXと言うと、「UI/UX」と言われることが多いが、UI=UXではない。インターフェースはUXの一部ではあるが、他にもナビゲーションやインタラクション、要件、戦略がUXには含まれる点も認識すべき点だ。
松浦氏が行っているUXデザイナーの仕事。分析から企画・設計、実装支援まで幅広に対応
では、UXデザイナーは何をしているのか。松浦氏はUIデザイン以外の3つの業務を担当していると示した。 ■ 評価・分析 ・Webサイトなどのユーザビリティ・アクセシビリティ ・定量・定性(アクセス解析データ・お客さまからの問い合わせ内容の分析・ユーザーインタビュー) ■ 企画・設計 ・設計案/改善案作成(導線・情報設計・インタラクション設計、SEOなど) ■ 実装支援 ・デザインディレクション・実装ディレクション、デザインレビュー、社内折衝(ペルソナ・カスタマージャーニーマップ・サイトマップなどの作成も必要に応じて行う) これを見ると、分析したり、デザインを考えたりと幅広く業務を行っていることがわかる。マーケティング業務やWebディレクションとかぶる部分もあるようだ。 ■ UXが悪いと売上減少などさまざまなKPIの悪化につながる UXが悪いと、サービスが使いづらくなり、サポートへの問い合わせが増える。これにより、電話がつながりにくくなり、結果的に顧客満足度が下がる。問い合わせが増えると、コールセンターの人的コストが増加し、チャットボットやAIなどのシステム導入を行うにしてもコストがかかる。 悪いUXの影響でコストがかかる上に、使いづらいというレビューが出回ったり、Webフォームがわかりづらくてユーザーが途中で離脱し、新規契約が減ったり、一方で解約が増えたり……と、どんどん負のループが連鎖していく。企業にとって、悪いUXは売上など、さまざまなKPIの悪化につながる。だからこそ、UXに注力する必要があるのだ。