かつての特急停車駅、にぎわい取り戻したい 石川、カフェを備えた旅行代理店オープン
石川県加賀市にある第三セクター「IRいしかわ鉄道」の動橋(いぶりはし)駅前に6月、カフェを備えた旅行代理店がオープンした。店名は「そらいろカフェ」。地元で旅行代理店を営んできた唐谷好二さん(52)が、かつて特急列車が止まり、にぎわっていた駅前を再び活性化させたいと思ったことがきっかけだ。(共同通信=奥山泰彦) 加賀市で採れたトマト、岐阜・飛騨産シイタケに長野産の野沢菜―。旅行気分を味わってもらおうと、カフェのメニューには地元の食材に加え、唐谷さんがツアーに添乗する過程で知り得た各地の名産が使われている。 オープン後、店内は女性客を中心に幅広い年代でにぎわっている。近くに住む常連の宮永久美子さん(75)は「吸い込まれるようにして入ってしまう。何もなかったところによく風穴をあけてくれた」と語る。 かつて動橋駅には大阪や名古屋と北陸方面を結ぶ特急列車が停車し、市内にある温泉の玄関口に位置付けられていた。だが、特急の停車が隣の加賀温泉駅(同市)に取って代わられたことで一転。3月の北陸新幹線金沢―敦賀(福井県敦賀市)間開業で、加賀温泉駅が新たな新幹線停車駅になったのとは対照的に、動橋駅は利用者の減少により無人駅となっている。
駅の近所で生まれ育ち、約20年前に旅行代理店を立ち上げた唐谷さんは「昔は市内一の繁華街と言われた動橋を盛り上げたい」と一念発起。50年近く新しい建物が建たなかったという駅前に社屋を移し、カフェ併設の代理店として再始動した。「コミュニティーの場をつくりたいという思いがあり、その手段としてカフェを考えた」と明かす。 今後は自らの人脈を生かして店内や駅前でイベントを企画するなどして一帯のにぎわいを創出し、県外客の呼び込みも模索する。「加賀温泉駅から一駅足を延ばすと、すてきな所があるらしいと知ってもらえるようになれば理想だ」