NBAファイナルの視聴者数がMジョーダン以来の過去最高を記録した理由とは
話題性に富んでいたのも今季ファイナルの特徴だ。 ファイナル5試合で1試合平均35.2得点してファイナルMVPに輝いたデュラントは、昨季西カンファレンス決勝でウォリアーズに7戦まで食らいつきながら敗れたサンダーのエースだった。 ところが苦渋を飲んだ同敗戦から1ヶ月余りでウォリアーズ移籍を決意。本人の優勝へのこだわりの結果の決断だったが、サンダーにとって「天敵」だったチームへの移籍は、元チームメイトをはじめ大きな反感を買うことになり、スポーツ談義好きのファンに美味しいネタを与えることに繋がった。 またジェームズは、東カンファレンス決勝第5戦で、ジョーダンの5,987得点を抜いてプレーオフ自己通算得点で歴代1位の座についた。7年連続、自己8度目のファイナル中は、ファイナルの通算得点でもジョーダンを抜いて歴代3位となり、マジック・ジョンソンの8度を抜いてファイナルの自己通算トリプルダブルを歴代トップの9度とするなど、次々とレジェンドの記録を塗り替えっていった。 ウォリアーズはというと、ファイナル最初の3試合で3連勝してプレーオフの連勝をNBA新記録の15勝まで伸ばし、最終的に16勝1敗、勝率94.1%という記録を刻んだ。 プレースタイルもそうだ。シーズン中の1試合平均得点は、ウォリアーズがリーグトップの115.9得点、キャバリアーズが4位の110.3得点。スリーポイント成功率はキャバリアーズがリーグ2位の38.4%でウォリアーズが3位の38.3%だ。 ウォリアーズは圧倒的な得点能力を持つデュラントを中心にどこからでも思い通りに攻め、キャバリアーズはジェームズとアービングの1対1から繰り広げる見応えたっぷりの攻撃で勝負した。最後には1対1が力尽きるという形になってしまったが、第1戦を除いた4試合で両チームとも110点以上を得点する試合展開は、ファンに興奮を与えた。 その一方で、他のスポーツでもそうであるようにテクノロジーやソーシャル・メディアの利用により、NBAが積み重ねてきた世界的なファン獲得の努力も忘れてはならない。 ツイッターやフェイスブック内にハイライト映像などをストリーム配信することでファンの関心を高め、ツイッター上で生のトーク番組も配信したりしている。 また1月には、3,300万人以上が「いいね」をしているフェイスブック・ページで100万人以上の「いいね」を占めるインドを対象にウォリアーズ対サクラメント・キングス戦をストリーム観戦できるようにした。 さらに今季開始前には、バーチャル・リアリティー・ストリーミング配信を手掛けているNextVR社と提携して、NBAのレギュラーシーズンゲームを視聴できるリーグパスで週に一回バーチャル・リアリティー中継することを発表し、ファンにその場にいるかのような感覚を楽しめる機会を設けるなど、ファンのニーズに応えるこに関しては、さらなる発展を目指している。 人気向上のためのリーグの努力、スター選手の集結、マイケル・ジョーダン時代と絡んだ記録。多くの理由で注目を集めたNBAファイナル。今後もこの2チームが伝説のライバル関係を築く可能性が高く、NBAの人気上昇に一役買うことになりそうだ。 (文責・山脇明子/米国在住スポーツライター)