「ツイッター離れ」やイーロン・マスク批判では解決しない…SNSが「怒り」と「対立」を引き起こす“根本的”な原因
2022年10月にイーロン・マスク氏が買収してから、「Twitter(現X)」は“劣化”したと言われ続けている。 差別発言やデマなどの監視がおろそかになり、収益化にともない「インプレッション稼ぎ」を狙うユーザーも増えたことから、「ヘイトスピーチやハラスメント、デマや偽情報が横行している」と問題視されている。 また、流行っているツイートに自動で返信する、「リプライゾンビ」とも呼ばれるボット(自動プログラム)のアカウントも目に見えて増加した。 マスク氏による買収に前後して、他のSNSにユーザーが移行する「ツイッター離れ」も目立つようになった。当初は分散型ソーシャルネットワークの「Mastodon」が注目され、その後はFacebookも運営するMeta社の「Threads」が話題となった。 現在、期待が寄せられているのは、Twitter社の共同創業者・元CEOのジャック・ドーシーが支援する分散型SNS「Bluesky」だ。 しかし、これらのサービスは本当にTwitterの代わりとなるのだろうか。ハラスメントやデマなどの問題は、マスク氏による買収やツイッターというサービスの特徴だけが原因なのだろうか。 ソーシャルメディアの問題に詳しい、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の津田正太郎教授に、今回はSNSの問題に対する有益な視点について話を伺う。
ツイッターは昔に比べて劣化した?
――ツイッターについて「昔に比べて劣化した」「イーロン・マスクのせいでひどい環境になった」ということがよく言われます。たとえば「東日本大震災の際には災害の情報収集などにツイッターが役立ったが、今回の能登半島地震ではデマが目立ちすぎて情報収集になにの役にも立たなかった」という意見がありました。 津田教授:そのような意見は、過去を美化したものだと思います。私の記憶では、東日本大震災の後にもツイッターはかなり荒れていました。私がフォローしていた人たちの間でも、原発を擁護するか擁護しないか、放射線の問題をどう考えるかなどをめぐって、口汚いケンカが起こっていました。すごく憂鬱(ゆううつ)に感じましたよ。 とはいえ、たしかに、マスクがツイッターを買収して以降、インプレッション稼ぎを目的したツイートや意味不明なリプライが増えたことは確かです。私も「マスクはロクなことをしないなあ」と思っています。しかし、前回にも語った「迷惑ボランティア批判」については、位相が異なる問題です。 ひとくちに「ツイッターで起こっている問題」といっても、フェイクニュースやデマの問題と、党派性や対立の問題は分けて考えるべきです。迷惑ボランティア批判は後者に属すると思います。 ツイッターでは以前から、在日コリアンや女性のユーザーが集中的に攻撃されることは珍しくありませんでした。現在ではそれに加えて、公開されているメールアドレスを利用した虚偽の申請や脅迫など、暴力性を増した攻撃が珍しくなくなってしまいました。 私としても、現在のツイッターでは怖くて発言できないことがいっぱいあります。そういう点では、10年前とは状況が異なっているところもあると思います。昔からある嫌がらせがエスカレートしているというか。