<高校野球>一時は部員5人に 統合の危機もあった本部、町の未来へ期待背負う 21世紀枠候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から九州・本部(沖縄)を紹介する。【吉見裕都】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 那覇市から車で北に約2時間、青い海と緑の山に囲まれた沖縄県本部町。1学年2クラス、全校生徒151人の本部は廃校、廃部の危機にさらされたことがあった。 少子化の進行に加え、2005年の学区制拡大により、町外の高校に進む生徒が増加。同校は定員割れが続き、11年に他校との統合案が浮上した。「高校がなくなると地域が悪循環に陥る」と地域住民の危機感が強まり、「存続を支援する町民の会」が発足。マリンスポーツの免許を取得できるコースなど特色ある学校づくりへの評価もあり、想定された「17年度で募集停止」の事態は回避されたが、上間均校長(56)は「生徒数が減れば、また統合話が出る危機意識はある」と説明する。 野球部は17年秋に選手が2年生2人、1年生3人の5人に減少。それでも、朝練習を含めた練習時間や少年野球チームとの交流など活動内容を一切変えなかった。今春卒業する島袋琉さん(3年)は「支え合って続けられた」と振り返る。17年秋はサッカー部の選手を借り、18年春は規則にのっとって他校選手を借りて「本部」として公式戦に出場した。 18年4月に新入生14人が入部。その一人の幸地怜央(れおん)主将(2年)は「保護者や指導者から勧められたし、本部から甲子園に行こうと仲間の気持ちが一緒になった」と明かす。宮城岳幸監督(39)は「5人が懸命に活動を続けたことが地域に認められて新入部員につながった」と評価する。活気を取り戻し、昨秋の県大会準々決勝では優勝した沖縄尚学に3―5と善戦。同大会直前の新人中央大会準々決勝では甲子園で春夏連覇経験のある興南を破った。 統合案が表面化した当時の校長だった知念正昭さん(68)は「今、地元で活躍する人は青春時代を本部で過ごした。野球部の活躍が誇りとなって本部に進む中学生が増え、未来につながっていく」と野球部に大きな期待を寄せる。本部の球児たちは町の未来のためにも自らを磨き続ける。