歴史認識問題は残るも「日本への好印象」は過去最高、石破政権発足で良好な日韓関係は継続か
(韓光勲:ライター、社会学研究者) ■ 石破茂氏の外交スタンスは? 自民党の石破茂新総裁が国会で首班指名を受け、新しい内閣総理大臣となった。石破新政権のもとで日韓関係はどうなるのだろうか。石破氏の著書や最近の世論調査から読み解きたい。 「日本に対する印象」の調査結果のグラフ 石破氏は自民党総裁選に先駆けて、2024年8月、著書『保守政治家 わが政策、わが天命』を出版している。自身の来歴や現在の政治に対する考え方が率直に語られていて非常に興味深い。「政策通」という前評判通りの見識をよく示している本なので、一読の価値がある。 現在の国際情勢を語った第6章「わが政策スタンスを語る」の中で「外交力と抑止力は二択ではない」という節がある。アジア太平洋地域の平和を維持するためには外交力と抑止力の両方が必要であると力説している。やや長くなるが引用する。 <そんな国際情勢下(ロシアのウクライナ侵攻や中台関係の悪化─引用者註)ゆえにでしょう。「今日のウクライナは明日の日本だ」とか、「台湾有事が急迫している」とかいう議論も目立つようになりました。しかしそうであればこそ、ロシアや中国との外交関係を絶やさない努力が、一方で重要だということを、強調すべきだと思います。 もちろん、米国やG7諸国との外交は大切です。日本は憲法においても「国際社会において名誉ある地位を占めたい」と宣言しているのですから、味方や友人は多いほうがいいに決まっています。が、そうであればこそ、地政学的に最も近い朝鮮半島をないがしろにするわけにはいかないのです。北朝鮮との交渉において何らかの糸口を見つけることも、日本の安全保障、ひいてはアジア太平洋地域の平和と安定のために必要なはずです。>
石破氏は「抑止力は必要である」という現実主義的な姿勢は前提として、その上でロシアや中国、北朝鮮との対話も欠かせないとする。「外交力と抑止力は二者択一ではない」というのはまさにその通りで、抑止力があるからこそ外交ができるのであり、より良い外交のためにこそ抑止力が必要である。両者は対立する概念ではなく、相互補完的な関係にあるのだ。 ■ 日韓関係の改善基調は続くのか その上で、石破氏は現在の日韓関係をこう評している。 <日韓関係は、尹錫悦大統領の明確なリーダーシップによって劇的に改善されつつあります。この好機を日本側もさらにフル活用し、尹政権が韓国国内において少しでも有利な立場に立てるよう、できるだけの努力をしなければなりません。> このように、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のリーダーシップを評価し、日韓関係の改善を望ましいことであると述べているのだ。これは岸田文雄首相と尹錫悦大統領のもとで進んだ日韓関係の改善基調を受け継ぐ宣言であると読めるだろう。 来年2025年は日韓の国交正常化から60年の節目の年である。韓国政府高官は、1998年以来の「日韓共同宣言」を出す方向に意欲を示していると報道されている。1998年の「日韓共同宣言」は小渕恵三首相と金大中大統領(いずれも当時)が発表した。日本は歴史問題で「痛切な反省とおわび」を表明し、韓国側も評価することで未来志向的な関係を目指したものだ。