[MOM5009]明秀日立GK重松陽(3年)_経験豊富な守護神が通算4度目となる全国大会のPK戦で躍動!1年前のこの日にさらわれた主役の座を堂々と奪い返す!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ Sponsored by アディダス ジャパン] [1.2 選手権3回戦 明秀日立高 1-1 PK5-4 帝京高 U等々力] 【写真】福田師王が大胆イメチェン「ライオンじゃん」「圧倒的金ピカ」 この2年で4度目となる全国大会のPK戦。そのすべてをゴールマウスに立って経験してきたのだ。場数は十分に踏んできている。ポジティブなイメージだけを膨らませて、11メートルの勝負に挑む。1年前にさらわれた主役になるのは、今度こそ自分だと信じて。 「トーナメントでPK戦はつきものというか、どうしても勝敗を決めないといけない中で、PK戦は守っているキーパーが勝たせられるかどうかで、メンタル的な部分で強い気持ちを持ってゴールに立てるかどうかということは去年から感じているので、そこはしっかり今日の試合でも発揮できたかなと思います」。 昨シーズンから明秀日立高(茨城)の正守護神を託されている、経験豊富なゴールキーパー。GK重松陽(3年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)が披露した執念のPKストップが、全国8強への進出権をチームへ逞しくもたらした。 「『見せ場だなあ』とは若干思っていました」。勝負の懸かったPK戦を控え、重松は静かに燃えていた。 帝京高(東京B)と対峙した3回戦。明秀日立は後半開始早々にMF柴田健成(3年)のゴールで先制したものの、終盤に差し掛かった残り10分で同点弾を献上。試合は1-1でPK戦へともつれ込む。 「先に先制することができて、そのまま終われるのが理想だったんですけど、失点した後も『PK戦になったらなったで、オレが止めればいいかな』と思っていました」。 重松には全国の舞台で、数々のしびれるPK戦に臨んできた経験値があった。昨年度のインターハイ決勝。桐光学園高(神奈川)と対峙した試合では、サドンデス方式に入った7人目のキックをストップして、日本一に貢献。同じく昨年度の選手権でも2回戦の東海大大阪仰星高(大阪)戦、3回戦の近江高(滋賀)戦と、2回のPK戦に挑んでいる。 ここまでの3回で唯一負けたのが近江との一戦。しかも、その試合が行われたのは1月2日。「去年のことが頭をよぎりましたし、本当に悔しい想いをしたので、その雪辱を果たしたいなと思っていました」。ちょうど1年後の同じ日に、再びベスト8への勝ち上がりを懸け、11メートルの距離を隔てて、相手のキッカーたちと向かい合うことになる。 両チームともに1人目は成功して、迎えた先攻・帝京の2人目。重松にはある“情報”が入っていた。「PKが始まる前に大塚先生(大塚義典GKコーチ)から聞いた情報を参考にしました」。それはベンチ外の選手たちが、自主的に調べてくれた帝京の選手たちの情報。2人目のキッカーのPK映像を分析し、スタッフに伝えてくれていたのだ。 「あのキッカーに対しては絶対にこっちだと思っていました」。重松が飛んだのは自分の右側。そこへ向かってきたボールを、ドンピシャのタイミングで弾き出す。「ベンチ外の選手が動いてくれて分析してくれたので、凄く感謝しています」。仲間の想いを背負った守護神のビッグセーブ。明秀日立が一歩前に出る。 5人目のキャプテン、FW竹花龍生(3年)のキックがゴールネットを揺らすと、いったんはチームメイトたちと一緒に喜んだあと、重松は以前からよく知る2人の元へと向かっていた。「田所選手や大橋選手は小学校時代から共に戦ってきましたし、特に田所選手はトレセン活動を通して一緒にやらせてもらう機会も多くて、そういう自分が知っているような選手が相手にいることもあって、負けたくないなと思っていました」。 帝京のディフェンスリーダー田所莉旺(3年)と守護神の大橋藍(3年)と握手を交わす。この舞台で負けることの悔しさを誰よりも知っているからこそ、彼らに声を掛けずにはいられなかった。 応援団へのあいさつを終えると、ジワジワと喜びが湧き上がってくる。「凄く嬉しかったですね。『絶対に止めてやりたい』という想いが強かった中で、ああいう形でPKを止められたので、シンプルに嬉しかったです」。みんなで乗り越えた『1月2日のPK戦』。その主役をさらった重松の表情に、大きな笑顔の花が咲いた。 昨夏の日本一を味わったからこそ、このチームの中で果たすべき役割がある。重松はこの1年を掛けて自分が意識し続けてきたことを、こう明かしてくれた。 「全国で上位に食い込めるような基準というのは何となく理解できますし、それを伝えるのが自分の役割だと思いますね。自分が経験してきたことは、試合に出ている選手だけではなくて、トップチーム全体に伝えられる部分は多いと思いますし、実際に1年間を通して伝えてきたつもりではあります。その上で個人としては『誰が見てもあの選手は良い選手だよね』というような見方をされるのが一番いいと思っていて、そういうキーパーを目指しています」。 ここから先は明秀日立が描いてきたストーリーを、新たな章へと突入させるためのチャレンジ。プレッシャーがないわけではないが、どちらかと言えばワクワクの方が勝っている。もう、やるしかない。 「ゲームが終わった後もみんなに言いましたけど、次が本当に大事だなと。学校の歴史のこともありますけど、まずは自分たちの気持ちが一番大事だと思うので、目の前の試合に負けたくないという想いを表現することで、結果も付いてくるのかなと。ベスト8とかベスト4とかそういうことは気にせず、目の前の相手に負けちゃいけないということを意識したいと思います」。 明秀日立に多くの歓喜をもたらしてきた、確かな実力を備える正守護神。数々の得難い経験を纏ってきた3年間の集大成。重松陽の存在感は、ここに来ても日に日に増し続けている。 高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチおめでとう!アディダスはサッカーに打ち込むすべての部活生を応援しています。 (取材・文 土屋雅史)