「バイト禁止」を変えたら公立大学への進学が増えた!
「ルールと社会が動く時」”三方良し”のプロジェクト
「もし、この学校でアルバイトを解禁したら、『家庭』は子どもに渡すお金も減って教育投資にその分当てられるかもしれない上に、 社会経験を早くから積むのにもやぶさかではないだろうし、『地域社会』も若い働き手を歓迎する状況です。『学校』としても挨拶が大切なことや社会の厳しさを生徒が身をもって体験している方が指導が上滑りせず入りやすいですし、進学指導の際にも体験談は有効です。解禁することで『三方良し』になります。」 岡山であった研修会の帰りの車で当時の副校長に熱弁しました。少し考えたのち副校長は「いいね!」と言い、「来週までに企画書にまとめてきてくれ」と私に頼みました。就職指導部とも連携しながら、このプロジェクトには「インターンシップPJ」と名がつき、教育的な方針のもとで契約を交わした企業のもとでのみ「インターンシップ」として生徒が働くことを認めるという形となりました。 地元の新聞やテレビにも取り上げられ、「〇〇高校、アルバイト解禁!」と見出しが踊りました。多少の手続きはあるものの、実質的なアルバイト解禁となり「家庭事情」などの後ろめたさを感じずに誰もがアルバイトできる学校になったのです。自分のクラスの子たちもラーメン屋などで働き、顔を見に行ったら「いつもありがとな」と半熟卵をサービスしてくれたことは嬉しくて今も覚えています。
「ルールが変わることで見えた景色」地方の子どもは”経験”を求めている
メディアの反響がすごく、地元ラジオ局や料亭、IT 企業など様々な業態の方々からお問い合わせがあり就職指導部の方とインターンシップの開拓をしました。中でも私の中で特に思い出深いのが、3人制プロバスケットボールチーム「TOTTORI BLUEBIRDS」のスタートアップ段階でのインターンシップ(高校生約30名受入)と山陰に初めてやってきたチームラボ「学ぶ!未来の遊園地」のインターンシップ(高校生約40名受入)です。「TOTTORI BLUEBIRDS」では生徒がそれぞれ「営業部」「広報部」など実際に会社にあるような部署に分かれて200万円のクラウドファンディングの準備や地元企業への営業活動について行ったり、YouTube・Twitter(現X)・Facebook・Instagram といったツールを使った情報発信などを経験させてもらえました。「成果報酬」などもあり、営業で実績を出した際などに追加で報酬をもらい喜ぶ姿もありました。クラウドファンディングも無事に成功し、その資金をもとに鳥取駅前の広場で会場が設置され公式の大会が開催されました。応援には学校のチア部も出てきて大盛り上がり(試合間のパフォーマンスタイムも経験)。もちろん大人の下支えがあってのことですが、自分たちが関わったことで街の景色が大きく変わる様、スポーツチームの活躍の場を自分たちで生み出し応援できた経験は何にも代え難いものだったと思います。 チームラボでは主催会社と調整してインターンシップとして開拓できたものの勤務地が汽車で1時間半、電車賃も3000円以上かかるため実質の時給が半減してしまう条件でしたが、募集してみたところ生徒が40名以上集まり驚きました。聞いてみると、鳥取県民にとってはアミューズメントパークで働いてみるチャンスは夢のような話、遠さやお金は正直関係ない! との声もありました。彼ら彼女らが求めていたものはまさに” 経験” そのものだったのです。